看板料理に学ぶヒットの秘訣:ビーフン東「肉粽(バーツアン)」

2012.07.02 400号 27面
200gのビッグサイズに驚かされる。食感を残しながらも軟らかい豚肉のおいしさがポイント。絶妙のバランスのよさが身上だ

200gのビッグサイズに驚かされる。食感を残しながらも軟らかい豚肉のおいしさがポイント。絶妙のバランスのよさが身上だ

 ●日本人好みの中華ちまき 偉大なるマンネリ商品

 台湾料理店も今ではポピュラーな存在になったが、東京でそのはしりとなった存在が、このビーフン東。美食家として知られた作家の池波正太郎も通ったという老舗で、看板のビーフンや飾らない台湾家庭料理が人気の繁盛店だ。

 ランチタイムの営業ではビーフンと、この「肉粽」の2品に特化し、他の料理は提供しないというこだわりぶりで、商品に対する自信がうかがえる。肉粽は1個650円。ランチタイムには600円で売るが、ほとんどのお客がビーフンと組み合わせ注文している。1個が約200gのビッグサイズで、一般的な中華ちまきと比べれば1.5~2倍の大きさ。

 具材は豚ばら肉、椎茸、ウズラ卵、生ピーナツと代わり映えはしないが、ボリュームは十分で、もち米との味バランスもよい。もち米、具材、ともに五香などの香りはあまり利かせずに、ごく素直なクセのない味に仕立てている。また、一般の中華ちまきはもち米を油で炒めるため、ややもすると油っこさが目立って食べづらいものもあるが、この店の肉粽はその点でも程がよく、適度な油のコクが感じられる。いわばすべてが日本人向きの味といってよく、それだからこそなじみのない料理をここまで人気化できたのだともいえる。

 もう一点、つくづく感心させられることがある。筆者も数えきれないほどこの肉粽を食べているが、もち米の仕上がり加減が常に均一。一度として期待を裏切られたことがないのだ。偉大なるマンネリ商品といっていいだろう。

 ●「ビーフン東」東京都港区新橋2-20-15

 ○プロフィル

 押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。

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