フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(16)コロワイド 「牛角」の買収で反転攻勢なるか
◆実態は再生失敗→レックスの身売り
今年9月7日、外食業界にとって久しぶりにインパクトのあるリリースが出された。コロワイドによるレックスホールディングスの買収である。
レックスホールディングスは、焼肉チェーン「牛角」を柱として急成長を遂げ、株式上場後はコンビニの「am/pm」や高級スーパーの「成城石井」を買収して多角化を図ってきたが、急成長に組織や財務面が追いつかなかったこともあり、2007年に投資ファンドとともに経営陣によるMBOにより上場を廃止して再建に取り組んでいた。
しかし、上場廃止後もグループ全体の業績は回復せず、am/pmや成城石井など外食以外の事業を軒並み売却。外食事業でも「レッドロブスター」を売却するなど、切り売りによる事業縮小→業績低迷の悪循環に陥っていた。
実際、業績はグループ売上高が1364億円(09/12月期)から746億円(11/12月期)にほぼ半減。経常損失は▲50億円(09/12月期)から▲29億円(11/12月期)に縮小したものの、同時期に140億円もの債務超過に陥っており、MBOを主導した投資ファンドも、もはや自力再建は見込めないとサジを投げたのが実態ではないか。
◆コロワイドも伸び悩み
一方、レックスの買い手となるコロワイドも、「アトム」や「贔屓屋」「がんこ炎」「ステーキ宮」など、やや知名度の劣るマイナーな外食チェーンの買収を繰り返していた頃の勢いはなく、リーマン・ショック後の業績は、10/3月期が売上高1066億円、経常利益29億円、11/3月期は売上高1010億円、経常利益20億円、12/3月期は売上高1018億円、経常利益25億円と、ほぼ横ばいで推移。店舗数も868店舗→875店舗→892店舗と、必ずしも計画通りには出店が進んでいないことがうかがえる。
しかも、買収を繰り返してきた後遺症ともいえる過大な有利子負債(約400億円)を抱えており、さらに約130億円もの買収を行う余裕があるようには見えない。約400億円の有利子負債だけでも、同社の当期利益(約7億円)の50倍以上もあるのである。
◆有名ブランドが欲しかった?
コロワイドは、もともと居酒屋「甘太郎」からスタートして「北海道」など居酒屋業態を中心としつつ、「多業種ドミナント戦略」として、居酒屋業態とレストラン業態のバランスをとりながら、一定の商圏内に集中出店を行う戦略をとってきた。
しかし、買収を重ねてきたものの、買った会社は全てマイナーなブランドか、出店地域が地方に偏ったチェーンばかりで、本稿でも取り上げた同業の三光マーケティングフーズと比べても存在感の薄さは拭えていなかった。
そこに、今回のレックス買収である。レックスは「牛角」「土間土間」「温野菜」など、ほぼ全国区の知名度があるブランドを擁しており、おそらくコロワイド経営陣が何としても手に入れたかった会社だったのではないか。そうでなければ、レックスの経営状態や買収金額の合理的な説明がつかない。
しかしながら、レックス系列の店舗は改装を先送りしている店が多く、今後のリニューアル負担の問題など、決して楽観できない先行きであることは間違いない。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。