外食史に残したいロングセラー探訪(88)会津屋「たこ焼き」「元祖ラヂオ焼き」

2014.08.04 425号 08面
常連の中には、おすましやお茶漬けに入れて食べる人もいるという

常連の中には、おすましやお茶漬けに入れて食べる人もいるという

 大阪名物の代表的な「たこ焼き」。80年ほど前、今里(大阪)の屋台で誕生した。たこ焼きといえば、タコが入った丸く焼いた生地に、ソースやマヨネーズなどをかけたものを思い出す人は多いだろう。元祖たこ焼きは、違う。何もかかっていないまま食べる。すると、口の中いっぱいに、和風だしやタコの風味が広がるのである。汚さずに、手でも食べられるたこ焼きは、ごまかしのきかない味わいともいえる。

 ●商品の発祥:ラヂオ焼きの屋台から

 1933(昭和8)年、創業者の故・遠藤留吉さんは、すじ肉やコンニャクを入れたラヂオ焼きを屋台で始めた。当時のラヂオ焼きといえば、子どものおやつに食べられていたもの。留吉さんは、だしや醤油を入れ、お土産にもなるように、冷めてもおいしくなる工夫をしていた。1935年、客から「玉子焼き(明石焼きのこと)は、タコを入れとるで」というヒントをもらう。そうして、「タコ入りのラヂオ焼き」から、「たこ焼き」が誕生した。

 ●商品の特徴:だしが効いた味わい

 会津屋のたこ焼きの特徴は、なんといっても、ソース不要の和風だしが効いた味わい。和風だしは、カツオだしをベースに醤油などを加え、小麦粉の量は、ギリギリまで抑える。すると、中がふんわりトロッと仕上がるのだ。タコは、火を入れても軟らかさの残るモロッコ沖のタコを使用。他に材料は、天かすのみである。

 シンプルな料理だけに、焼くのは職人技。簡単そうに見えるが、「5年たっても、お客さんに出せるたこ焼きを焼けんかった人もいます。器用な人でも、そばで指導する人が必要なくなるまでには、半年から1年はかかりますね」と常務取締役の小島洋行さんは話す。

 ●販売実績:平日で2000パック

 たこ焼きは、全8店舗で平日1日、約2000パック(12個入り)、休日には約6000パックほど売れる。持ち帰りが多い本店(大阪・玉出)では、電話注文が多く、平均客単価が、大体1000円という。

 現在、会津屋は三代目の遠藤勝さんが引き継いでいる。「初めて召し上がる方には、よくびっくりされますよ。何もつけなくてもおいしい、冷めてもおいしい会津屋のたこ焼きを1人でも多くの方に味わってほしいですね」と、勝さん。人を育て、それに応じた店舗展開をしていきたいとのこと。伝統を守りつつ、挑戦を続けていく。

 ◆企業データ

 社名=(株)会津屋/本店所在地=大阪市西成区玉出西2-3-1/店舗数=8店舗(大阪7店、東京1店)/事業内容=たこ焼きを中心とする飲食業。自宅でも、出来たてのたこ焼きが楽しめるよう急速冷凍した冷凍品も販売している。

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