海外通信 外食ビジネスの新発想(106)自己表現としての食のサブスク
●個性あふれる食事の宅配市場
米国のPrepared Meal市場が広がっている。いわゆる食事の宅配サブスクリプションだ。かつては「忙しいから、料理の時間を省く」という利便性が主な価値だったが、今では健康管理やライフスタイルそのものへの投資として捉えられるようになってきた。高タンパク、食物繊維豊富、低糖質、グルテンフリー、添加物不使用、さらにはGLP-1対応といった表示は、特別な付加価値ではなく、多くのサービスで見られる基本的な選択肢になっている。
各社が提案する価値もさまざまだ。「ファクター」は栄養設計を前面に出し、ダイエット目的や高タンパクなど、個々の健康目標に合わせて選べるサービスとして展開し、有名アスリートが広告に登場している。「クック・ユニティ」では、ミシュラン星付きなど多彩なシェフによる料理から、ヴィーガン、地中海食、ケトン食、グルテンフリーなど、自分の食生活に合わせて料理を選ぶ楽しさがある。比較的新しい「テンポ」は大手老舗食材宅配グループを親会社に持ち、2024年に展開をスタート。アクティブな生活に合わせた栄養管理を掲げ、シェフの考案する高タンパクメニューを約2分で温められるのが特徴だ。
実際に試してみようと各社のサービスを調べていくと、「メソドロジー」は特に目を引く存在である。健康的でカラフルな食事が再利用可能なガラス容器や弁当箱に入って届く。冷蔵庫を開けたときの美しさまで考えられたパッケージは、オフィスランチにも似合う洗練されたものだ。ただし、調べたプランでは、週2日、1日3食とスナックを含めて約345$。長期的に利用するには、かなり高い価格帯と感じられた。一方、1食8.50$程度から利用できるサービスもある。価格面では手頃だが、パッケージは簡素で、エコノミークラスの機内食を思わせるものもあった。食事の宅配サービスは味や栄養だけでなく、届いたときの気分や食事の時間そのものまで含めて選ばれるようになっている。
こうした比較の中で選択したのが「ベジタブル+ブッチャー」だ。週6~7食で約100$という価格帯に加え、自分では選ばない食材の組み合わせ、オーガニック野菜を中心にしながら肉や魚も選べる柔軟性、そして週替わりで選べるメニューの豊富さも特徴。食材の透明性、生活パターンや好みに応じて内容を組み立てられる点も、単なる時短食とは異なる魅力となっている。
各社を見比べると、食事の宅配サービスは何を食べるかだけを選ぶサービスではなくなっている。健康を重視するのか、食の楽しさを優先するのか。家族との時間を大切にするのか、どこで誰と食べるのか。どのサービスを選ぶかには、どのスマートフォンを持ち、どのジムに通うか、といったその人がどんな暮らしをしたいのかという価値観が表れる。食事の宅配サービスは今、便利な食事という枠を超え、自分らしいライフスタイルを表す一つの選択になりつつある。(井澤歩)
【URL】
Tempo https://www.tempomeals.com
Cook Unity https://www.cookunity.com
Vegetable+Butcher https://vegetableandbutcher.com















