2026年8月度、外食動向調査 フードコンサルティング
●スポットワーク内製化就業規則への記載事例
前号では、スポットワークの内製化(直雇用化)を進めるに当たって注意すべき労働基準法、社会保険、給与即時払いの労務管理上の注意点を掲載したが、今号では就業規則への記載例を含め、より具体的な事例について取り上げたい。
(1)契約の成立タイミング(申込と承諾)=アプリで応募があった際、どの時点で労働契約が成立するかを定義。
【〈文例〉契約成立】=本条における単日雇用契約は、従業員が専用システムを通じて応募し、会社(または店舗責任者)がシステム上で採用を承認した時点で成立するものとする。
(2)労働条件の明示方法(電子交付)=労基法に基づく労働条件の明示を、システム上の画面提示やメールで行う旨を定める。
【〈文例〉電磁的交付】=会社は、労働基準法施行規則第5条第4項に基づき、労働条件通知書およびこれに準ずる書面の交付を、本アプリまたは電子メールを用いた電磁的記録の送付により行うものとし、従業員はこれに同意する。
(3)労働時間の通算と他店舗勤務の取り扱い=自社の他店舗やグループ内でのダブルワークによる割増賃金発生を防ぎ、把握するための条項。
【〈文例〉労働時間通算の申告】=従業員は、自社の他店舗またはグループ会社において、同日または同週に勤務する(またはその予定がある)場合、事前にシステムを通じて申告しなければならない。通算労働時間が1日8時間または1週40時間を超える場合、会社は事前にシフトの調整または割増賃金の支払いを行う。
(4)給与の支払方法と即時払い(手数料負担含む)=給与の即日払い(随時払い)を行う場合の運用ルール。
【〈文例〉賃金支払と即時払い】=賃金は月1回指定日に口座振り込みにより支払う。ただし、従業員が希望し会社が認めた場合、確定した賃金相当額を勤務終了後即時に振り込むことができる。なお、即時振り込みにかかる振込手数料は会社負担(※または利用規約に準ずる)とする。
(5)準備・着替え時間の扱いおよびペナルティー=トラブルになりやすい「着替え時間」の定義と無断欠勤(バックレ)などへの対処。
【〈文例〉準備時間と出退勤打刻】=労働時間は、指定された制服への着替えを完了し、業務指示を受けられる状態となった時刻から開始し、業務終了後の着替え直前の時刻をもって終了とする。制服着用に要する所定の時間(5分間)は労働時間としてカウントし、給与を支給する。
(6)ワーカー都合のキャンセル(辞退・遅刻)=法律上、契約成立後の自己都合キャンセルは「契約違反(債務不履行)」に当たる。ペナルティーとしてアカウント停止(次回以降の応募制限)を明記する。※ただし「違約金(〇〇円払え)」という違約金の支払いをあらかじめ定める規定(労基法16条違反)は厳禁。
【〈文例〉ワーカー都合の辞退・ペナルティー】=契約成立後、自己の都合により勤務を辞退する場合は、勤務開始時刻の〇時間前までに専用アプリなどから辞退手続を行わなければならない。前項の通知なく無断欠勤した場合、または勤務開始直前の辞退が複数回に及んだ場合、会社は本システムにおける今後の応募資格を一時的または永久に停止することができる。正当な理由なく遅刻・早退をした場合、実労働時間分のみ賃金を支払うものとする。
(7)会社都合のキャンセル(シフトカット・店舗都合)=売上不振や悪天候、人員過剰を理由に会社側からキャンセルする場合は、労働基準法第26条(休業手当)に基づき支給義務が発生する。
【〈文例〉会社都合のキャンセル・休業手当】=天災地変、その他やむを得ない事由を除き、会社の都合により確定した勤務を取り消す場合、会社は以下の基準に従い休業手当を支払う。
▽勤務開始24時間前までのキャンセル=支給なし(別の振替日を提示する場合を除く)▽勤務開始24時間未満のキャンセル=予定労働時間に対する平均賃金の60%以上(または予定給与全額)を支払う▽勤務開始後に、会社の都合により早期退勤(早上がり)を指示した場合=実際に労働した時間の給与に加え、予定労働時間の残余時間に対して休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う
●実務上の注意点
「違約金」の設定は不可=「直前キャンセルしたら損害賠償として5000円徴収する」といった規定は、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に抵触し違法となる。「次回以降の募集に応募できなくなる(利用停止)」という運用制限で対応する必要がある。
面接なしの即時採用でも「誓約事項」の同意チェックを取得=内製化アプリやWebフォームの応募画面で、上記の「キャンセルポリシー」「反社会的勢力の排除」「個人情報・機密情報の保持(衛生・レジ操作など)」に関するチェックボックスを設け、同意(タップ)しないと応募できない仕組みにしておくことが必須。















