ドミノ・ピザ、ファストフードに進出
宅配ピザチェーンのパイオニア「ドミノ・ピザ」は、ファストフードスタイルのピザショップ一号店を神奈川県川崎市にこのほどオープンした。構想四年の満を持したコンセプトと既存インフラのフル活用により、今後三年間で全国二一〇店舗のFC展開を目指す。
新規オープンしたFFの「ドミノ・ピザ武蔵小山店」は、焼き立てのドミノ・ピザを求めやすい一人前サイズ・低価格で提供するもの。店舗はアメリカンテーストを基調とし、オープンキッチンの採用によりシズル感を訴求。ピザは丸形直径一五㎝のサイズで、カマンベールチーズをトッピングした「カマンベール」やホワイトソースが決め手の「クレマ・シーフード」など新メニューを主体に六種類。一枚二四〇円からの低価格で、セットメニューは三八〇円と四八〇円の二種類。
出店投資五〇〇〇万円と別表の店舗パッケージで売上げ八〇〇万円・来店者数一万四〇〇〇人の月商を見込む。
「従来のFFピザとは大きく異なる」(アーネスト・M・比嘉代表取締役)というなかで特筆すべきは、ピザの焼成マニュアル変更と、独自に新開発したストック機器の導入だ。宅配の場合、届いた時に食べごろの温度帯(六〇~七〇度C)に冷める時間差焼成がポイントだが、新店では焼成後に即提供できるように調理・焼成マニュアルを改めた。
また、焼き立ての品質保持とオーダーピークの対応を目的に、ウオーマーとスチーマーの両機能を備えたストック機器を開発。一五分間の作り置きを可能にし、再加熱ピース売り方式のアメリカンスタイルと大きく差別化した。
これまでに数多くのFFピザショップがオープンしたが、成功例は皆無に等しい。「万全を期した」(アーネスト・M・比嘉代表取締役)と言う。
◆「ドミノ・ピザ武蔵小山店」(東急武蔵小山駅南口=神奈川県川崎市中原区小杉町三‐四七二)営業時間=午前7時~午後9時、無休/店舗面積・席数=二七・五坪・三六席/月商目標=売上げ八〇〇万円/来店者数=一万四〇〇〇人/出店投資=五〇〇〇万円
●比嘉代表取締役に聞く
‐‐出店の経緯は。
比嘉 宅配ピザを一五年間展開し、ドミノのブランドイメージと各拠点の管理体制が完成した。FF店の狙いは、それらを十分に生かすこと。(1)新規需要の開拓(2)ブランドの活用(3)既存インフラの効率的運用、である。
‐‐FFのピザショップに成功例はないが。
比嘉 焼成済みのピザを再加熱してピース売りするアメリカンスタイルが数多く失敗している。理由は、提供時間が長く焼き立てに比べて品質が劣るからだ。繊細な日本人のし好に合わなかったのだろう。ピザ人気が定着したからといって、メニュー力だけで売れるほどFFは甘くない。われわれも白紙の状態から出店までに四年の歳月をかけた。
‐‐FFで苦労したところは。
比嘉 手作り感ある焼き立てのピザを短時間で提供すること。これはストック機器の新開発でクリアした。この新機器がこれまでのFFピザショップと一線を画す原動力だ。
‐‐既存宅配ピザ店とのバッティングは。
比嘉 FFはモーニングとランチと喫茶。宅配はディナー。時間帯によりニーズがすみ分けられる。事実、FF店エリアの既存宅配店に影響は出てない。逆に、FF店を気軽に活用してもらうことで、宅配オーダーの相乗効果が見込めるはず。
‐‐一号店の感触は。
比嘉 開店景気もあるが月売上げは一〇〇〇万円を突破する勢い。「ドミノだから安心」という消費者イメージが、大きく後押ししているようだ。
‐‐初めてのFC展開については。
比嘉 一号店で確信を得たら多店舗化を一気に加速する。今後一年間が勝負だ。これまで培ったブランドイメージと既存宅配のインフラをフル活用する。