居酒屋業界、勝ちと負けの分水嶺はどこ:店舗開発

2001.02.05 221号 2面

この二一世紀の始めに、外食市場で元気の良い居酒屋チェーン企業を検証する。さっそく別表を見ていただきたい。前年比売上高が大幅にアップしている企業と、反対に下げている、または停滞している企業が多数存在している。勝ち組と負け組の分かれ目は何か。その分かれ目を見つけるために、まず、勝ち組からその勝利の秘密を探る。

居酒屋業態で、圧倒的な強さを誇るのが「白木屋」「魚民」などをチェーン展開する白木屋グループ((株)モンテローザ)である。しかしその華々しい業績の裏には、別掲の通り、多くの問題を抱えているようだ。過酷な深夜勤務、残業代や超過勤務手当ての未払いを巡る「労使紛争」などである。こうした内紛をどのように解決するか、大神会長の手腕が問われるところだ。

白木屋グループのすごいところは、店舗の物件開発に見られる。駅前や通りから目立つビルを一棟丸ごと借り上げ、自社グループの各種店舗で埋めてしまうことだ。白木屋や魚民のほか、「笑笑」や「魚萬」、その他の多業態で複合入居させてしまうのである。こうした、ダイナミックな店舗開発を大胆に推進する白木屋グループ。「庄や」を手掛ける大庄グループを除いて、ここまではできないだろう。

次に、小説「青年社長」でも有名になった、ワタミフードサービス(株)(渡辺美樹社長)の「和民」である。郊外型の「和み亭」の開発や「TGI・フライデーズ」、またこのほど新業態として打ち出した「カーラジェンテ」などで、事業カテゴリーの幅を広げてきており、快進撃は止まらない。和民と魚民、白木屋の駅前争奪戦は激しさを増しており、ちまたでは「タミタミ(民民)戦争」とさえ呼ばれるほどの激しさである。

現在、この争奪戦に、「甘太郎」「甘太郎J」を展開する(株)コロワイド、(株)エイ・ディ・シィの刺身居酒屋「北乃一丁」、それに(株)ラムラの「にほんばし亭」「土風炉」の大型店も加わり、五つ巴の混戦となっているが、陣取り合戦はだいたい出そろっている模様だ。

駅前を含め、一〇〇坪以上の大型店を展開して成功しているのが、(株)榮太郎の「ジョン万次郎」と(株)平成フードサービスの「北海道」である。ジョン万次郎はコンセプト見直しで多業態開発・FC展開へと方向を変えているようだが、北海道は有機野菜や自然食材にこだわり、ますます若い女性を中心とした客の支持を得て、こうした大型物件を上手に使いこなしているようだ。

こうした駅前一等地先陣争いと無縁なのが、関西系のマルシェ(株)が展開する「酔虎伝」「八剣伝」や、米久(株)が引き取って快進撃を続ける「チムニー」である。彼らは、各駅停車の駅前や少し離れた二等立地で、二〇~三〇坪の小型店舗で十分に採算にのせている。

このように、まず勝ち組は明確な開発戦略と立地の選定基準を持っている。ここで、売上げ減少組とはすでに大きな差となっている。

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