地域ルポ・新横浜 ニュービジネス街機能整う ビジネスマン狙い飲食店進出急ピッチ
新横浜は昭和39年、東海道・山陽新幹線の「こだま号」が停車する駅として開設したが、四、五年前までは農地や空地が拡がる空虚な風景が展開していた。それが現在では街並みの整備が大きく進んで、オフィスビルやホテルが建並び、ビジネス街としての発展をみせている。新横浜は横浜市港北区にあって、市の中心から文字どおりに北約五キロメートルの地点に位置している。現在は新幹線、横浜線に加えて、市営地下鉄三号線も結節して交通の利便性を高めており、横浜の都心と並ぶ新たなビジネスセンター街としての機能を発揮している。JR、地下鉄合わせて一日当たりの乗降者数は約二二万人、地域の市街地化が進むと共に来街者は年々増加してきており、これに伴って飲食店を中心とする商業集積も大きく進んできている。この街は物理的な発展のみならず、行政的にも「第二都心」として位置づけられており、西暦二〇一〇年を目標に駅南側(篠原町地区)の市街地化も推進していく計画で、現在区画整理が進められている。
新横浜は新幹線を利用すれば東京から約二〇分。近接した時間距離にある。
駅から二、三分のところに横浜アリーナがあり、そこで有名シンガーやタレントのコンサートやイベントが開かれるので、これを目当ての若者が多く来街する。
このため、これらヤングの間では“シンヨコ”の愛称で親しまれており、アリーナでの催物によっては若い女性を多く目撃する。
駅改札を出る。高架下の改札口だが、東京寄りの高架下はショッピングゾーン「ASTY新横」が展開する。
物販、飲食など合わせて計三三店が出店しており、うち飲食は六割を占める。高架下とは思えないシャレた雰囲気の空間で、どこか縁日的な雰囲気も合わせもっている。
このショッピング空間は、昭和62年7月にオープンした「ASTY1」、平成元年7月にオープンした「ASTY2」の二つのフロアがジョイントしているもので、年間四〇億円近くを売上げる商業ゾーンだ。バブルがハジケる前は毎年二ケタ成長を続けてきたが、現在は低迷している。
飲食店舗は、和・洋・中・バー、喫茶、うどん・そばなど二〇店が出店しているが、一般的に知られた店では欧風レストラン「つばめグリル」、パン・サンドイッチ・ドリンク「神戸屋」、弁当・シュウマイ「崎陽軒」、テイクアウト寿司「京樽」などだ。
ASTY1のショッピングゾーンと直角に南口(篠原口)に伸びる、といっても二〇m前後の空間だが、“オゾン通り”にも飲食店舗が出店している。寿司「江戸銀」、ビアブラッセリー「Beer Port go」、コーヒーハウス「エンリコ」、そば処「戸隠」、大衆割烹・遊膳「たつ吉」などの五店で、ASTYのファッション感覚とは異なったノスタルジックな雰囲気をアピールしている。
改札口からストレートに外に出ると、広い空間が拡がる。駅前広場と車寄せ、駐車場、バスターミナルで、かつてはここは農地だったところだ。
そこを整備してのフロントスペースだが、バスターミナルの外側は歩道で、それに接しては環状二号線が東西を貫いている。
いわば地域のメーンストリートだが、この道路に沿ってオフィスビルが建ち並んでおり、見慣れた都市景観を呈している。
駅前広場の東寄りは環状二号線と駅前大通りがクロスする交差点になっており、車の往来が激しい。駅前大通りも片側四車線あり、高層ビルが建ち並んでいる。
しかし、ビルが建ち並ぶといってもその地域は限られる。駅前大通りは北へ三〇〇mも進めば鶴見川で、川向うは農地、草木の田園風景。
環状二号線も交差点から東へ二〇〇~三〇〇mほど行った、横浜アリーナが位置する太尾新道入口の交差点あたりまでがビル街で、その先はロードサイドレストランの五右衛門(ステーキ・とんかつ)、ジロー、すかいらーくなどが出店する“郊外”の立地特性をみせている。
環状二号線は駅前交差点から西方向に、横浜線と立体交差する二〇〇mくらいまでが“市街地”で、ここから先はやはりシンヨコの“郊外”という雰囲気だ。したがって、駅前の交差点を軸にすれば、半径二〇〇~三〇〇mの範囲がシンヨコのビル街(市街地)ということで、意外に街はコンパクトにまとまっているという印象だ。
もっとも市街地化が進んだのがここ五、六年であるので、今後時間の経過と共にさらに街並みの整備が進んで、ビジネスおよび商業ゾーンを増幅させるものと期待される。
現に駅の南口の篠原地区では西暦二〇一〇年を目標に、市街地化事業が計画されているのだ。
シンヨコのシンボリックな都市施設といえば新横浜プリンスホテルだ。地下一階、地上四二階(高さ約一五〇m)の円筒形の建物で、このユニークなデザインの建物は地域のランドマーク的な存在だ。
同ホテルは平成3年3月にオープンしたもので、客室数一〇〇二室のキャパシティをもつ全国でも有数の大型ホテルだ。
このホテルは客室のキャパが大きいだけではない。ホテルでは珍しく一五五の個性的な店舗を展開するショッピングプラザ「プリンスペペ」(地下一階、地上四階)を併設しているのをはじめ、一五〇〇人収容の大宴会場「シンフォニア」(五階)、また、ホテルの地下一階、地上一~二階、四〇~四二階にカクテルラウンジやステーキ・シーフードレストランほか、和・洋・中のレストラン計一〇店舗を出店しており、地域でも有数の飲食ゾーンを形成している。
この円筒形のホテルは外観のユニークさばかりではなく、建物のトップから地上六階まで内部が吹き抜けのデザインという珍しい形状で、ホテル業界では最初のスタイルのものだ。
駅前の交差点に出れば、環状二号線東方向の右側道路沿いにこの円筒形の建物を見ることができるが、交差点からは約二〇〇mくらいのところだ。
プリンスホテルの入口前に立てば、二号に沿って左側に富士通やマルハチ、右側にリコーのオフィスビルが、さらに富士通の東隣には横浜アリーナが近接している。
このエリアには店舗は少なく、無機質なオフィス街が展開するという雰囲気だが、マルハチビルの地下一階に居酒屋チェーンの「庄や」が、カラオケスタジオを併設して出店、また、富士通別館の地下一階にコーヒー&レストラン「TikiTiki」が出店しているのが目に入る。
ここからさらに道路に沿って東に四、五〇mほど歩けば、前記の太尾新道入口(交差点)で、この手前の右手にとんかつ、ステーキ、シーフードの「五右衛門」が、交差点の先、道路左側にファミリーレストランの「ジロー」「すかいらーく」のフリースタンディングの店が出店している。
このエリアまではビル建設が進んでいないので、フリースタンディングのファミリーレストランが出店しているということだが、車の往来が著しいので店への集客力は大きい。
太尾新道入口の交差点をジローを右に見て北へ歩けば、横浜アリーナの北側に出る。そこはガーデンスペースになっていて和やかな雰囲気だが、二車線の道路を一本挟んで、ビルの一階にレストランが出店しているのが目に入る。
欧風料理「半蔵屋」だ。四年前のオープンで、九階建ての自社ビル一、二階を使っての営業だが、この店の大きな特色は二次会パーティーなどグループ対応ができるということで、着席で八〇人、立食で一二〇人を収容することができる。
料理はフランス料理が基本で、ランチメニューがコース料理で一八〇〇円から、ディナーメニューが四八〇〇円から、披露宴メニューが一万三〇〇〇円から、二次会パーティーが七〇〇〇円からという価格体系。
心のこもった接客サービスとオリジナルケーキで、独自の集客力を発揮している。
この店の前から西へ二〇〇mほど前進すると駅前大通りに出る。
そこは交差点で標示板に新横浜二丁目北側とある。ここを横断してさらに西に五〇mほど進む。右手の角地にコンビニの「ファミリーマート」があり、そこを北へ右折すると、左側に今春オープンして話題になった「新横浜ラーメン博物館」が見える。
ラーメンの文化と歴史を徹底的に追求した博物館で、一階に全国三二〇軒から集めたドンブリなどの展示とラーメン関連グッズのショップ、地下一、二階が昭和30年代初期の懐しい街の夏の夕方の“原風景”、また、これらフロアには「すみれ」(札幌)、「大安食堂」(喜多方)、「げんこつ屋」、「野方ホープ」、「勝丸」(各東京)、「六角家」(横浜)、「こむらさき」(熊本)など全国から現役のラーメン店八店舗も集合させている。
この博物館から駅前大通りに戻って、一〇〇mほど駅に向かって進む。新横浜二丁目の交差点に立つ。そこの角地のビル「新横浜SSビル」の地下一階に鳥焼屋「五右衛門」、二階大皿惣菜居酒屋「遊」、三階クラブ「Mana」、四階に居酒屋チェーン「村さ来」が出店している。
このポイントから二、三〇m西へ前進すると、ビルの地下一階から地上一~五階にかけてイタリア料理、牛タン焼、居酒屋、しゃぶしゃぶ、焼肉、クラブ、カラオケといった店が展開しており、賑やかさが増す。
この地区から西および南側、地番でいえば「新横浜二丁目」のブロックに、さらにすし、海鮮料理、割烹、大皿料理といった店が集積しており、このエリアがシンヨコのボリューム的な飲食ゾーンという印象を強くする。