絶対失敗しないための立地戦略(36)出店は閉店であるを念頭に

1994.05.23 52号 18面

前号の続き“テナント入居時の「判定チェック項目」”の第三回。今回は契約、賃料、期間、更新などを中心にお届けする。

契約面積の実態確認。一般的に、通常の賃貸スペースの表示は、壁芯から壁芯までであり、さらに、通路や踊り場などといった共有スペースがこれに加わってくるので、営業用として実際に使用できるスペースはかなり減少することとなる。

そこで、契約する際には、壁芯でなく、内のり面積である「実有効面積」と、共有スペースなどの「パブリックスペース」を除いた本来の活用実スペースをよく確認しておく必要がある。パブリックスペースは、物件によってかなり異なるケースが多いが、一般的に、レンタルスペースとして表示されている面積の一五~三〇%ほど。なかにはビル入口の導入部分やエレベータースペースまで算入している例もあるので特に注意し、確認したいもの。設計図だけでは分かりにくいので、実際にスケールを当てて実測面積を算出する位の心構えが必要だ。

安易に提示された面積を信用して、そのまま経営計算を行い、実際に工事にかかったらスペースが三分の一も少なく、基本計画が大狂い‐‐なんていう笑えないケースもあるのでよくチェックしたい。実有効面積による客席数、収容人員、厨房スペース、ショーケースなどの算出が大きなポイントとなる。

価格と賃料の具体的チェック。賃貸システムは、大きく分けて(イ)固定家賃(ロ)歩合制(ハ)固定家賃プラス歩合制‐‐の三タイプがあるが、その中のどれなのか……。歩合制の場合、特に注意したいのは逓減方式になっているかどうか。歩合制の場合、大半は固定最低家賃方式との組み合わせが多いが、売上げが上昇するほどその金額(歩合金)は巨大なものとなり、一定レベルを超えると利益率は極端に低下し、経営を著しく圧迫する‐‐という大きな落とし穴がまっているので特に注意したいもの。

賃料の改正は二~三年で一〇~一五%程度というのが一般的だが、中には物価指数との連動制などというのもあり、事前によく確認したい(上昇限度を確認)。

賃料のほかに、当然、保証金、敷金といったものをとられるが、最近は、建築協力金などという名目もあり、金額が大きいだけによく確認したい。さらに、その返還保証、据置期間は、金利は、質権設定は可能か、契約更改、または譲渡による際の保証金、敷金などの扱いは……など、チェックする項目は多い。

賃貸借契約期間と契約更新条件のチェック。契約期間は二~三年がほとんど。なかには一〇年などというのもあるがこれは例外的。契約期間満了の際の更新条件は特に注意してチェックすること。保証金の追加とか、償却(期間満了ごとに一定金額を償却)があるケースも多い。首都圏では、「更新料」という名目で、賃料の一~二ヵ月分を徴収されるケースが多いのでこれも注意して確認したい。最近は不況で、スペースオーバーでもあり、保証金や敷金の償却、更新料徴収は減っているものの、まだまだこうした不利な条件は慣行として多いのでよくチェックしたい。

造作譲渡は可能か。大半の契約書が、解約の場合は原状回復で物件明渡し‐‐となっているが、実際上は、一定の名儀書替料や、造作譲渡承認料で、いわゆる「造作権利譲渡」を認めているケースが多いようだが、契約の場合は、ぜひこの「造作権利譲渡」を明文化して契約したいもの。その際、その条件も確認明文化しておきたい。

「出店は閉店である」ということを頭に刻みこみたい。閉店する際にこの「造作権利譲渡」が認められないと大きな損失をまねくことになる。逆に居抜き店舗を「造作権利譲渡」で契約する場合は、その価格に含まれている内容、条件、更新、造改築条件など、詳細にわたって厳しくチェックすることが必要となる。

マーケティングコンサルタント 戸田光雄

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