喫茶店経営の新戦略(1) 飲食のバランスで勝負

1993.11.15 40号 16面

喫茶店といえば、かつては純喫茶や音楽喫茶をイメージしたが、これらの業態は今となっては少数派になってしまっている。喫茶店は待合い所であり、デートスポット、レストルーム、打ち合わせや商談の場といった多様な使われ方をしているが、しかし、消費単価が低い割には回転が悪く、収益性も低い。

このため、廃業したり、転業したりと、喫茶店の数は年々減少の途を辿ってきている。因みに、これは小売店など商業集積度の高い吉祥寺(東京・武蔵野市)の例だが、平成元年とその三年前の昭和61年と比較しても街中から二割近くもの喫茶店の数が減っており、店舗数は全体で一六四店、なおもこの数は減少の傾向にあるという(武蔵野市商工経済振興課)。

しかし、とはいっても街中から喫茶店がすべてなくなるというわけでもない。あくまでも集客力が小さく、営業効率の悪いところが撤退していくということだ。

喫茶店は市民の憩いの場、コミュニケーションの場としても、その存在価値は大きい。問題は店の収益力をどう高めていくかということだが、これは店の立地、規模、経営方針などによって決定してくる要素でもあり、画一的には論じられない面がある。

喫茶店は文字どおりに、コーヒーや紅茶を飲ませるところで、また、その添えものとして、軽食やケーキなどを提供するわけだが、基本的にはコーヒー(紅茶)がおいしくなくては、店の売りものとしての大きな武器を失うことになる。

おいしい飲み物はもちろんのこと、ハート(ホスピタリティ)のあるサービスが提供できてこそ、客は店を利用し固定ファンとなってくれるのだ。規模の小さい個人経営の店ならとくにそのことが大切なことで、ビジネスとしての生き残りもある。

家賃コストのかからない自己物件で、いうところの“パパ・ママ経営”であれば、喫茶業態は原材料コスト(二五~三〇%)が低いだけに十分にペイしていくビジネスといえるのだ。

コーヒーの味もおざなり、サービスにハートがなく、店もうす汚れているというのであっては、品の悪い客の溜り場となって、早晩店は潰れることになる。

店に安定して客がやってくれば、種々営業戦略も展開できる。朝はトーストやサンドイッチ類のモーニングサービス、昼はスパゲティやピラフ、カレーなどといった軽食の提供、夜はショットバーやカラオケスナックに変身するという時間帯別の営業も可能になる。

事実、店の立地条件によってだが、最近はこういった営業シフトでの店が増えてきている傾向にある。

チェーンシステムのプロントやドトールコーヒーが二年前から始めたカフェ・エクセシオールなどは、ごはんものやカラオケはないが、朝・昼・夜の顧客ニーズに対応した運営形態で大きく集客力を高めている。

しかし、ここが難しいところだ。ニーズかあるからといって、業態の枠を越え、メニューを増していくと、喫茶店としての性格をスポイルして客に対する訴求のポイントを失ってしまう。

何が売りものなのか中心軸がなくなり、方向性を見失っては店の経営は繁雑になり、却って営業コストがハネ上がってくる。

たしかに、喫茶店の生き残り戦略の一つとして、時間帯別のメニュー構成や運営形態のバリエーションが拡がっている面があるが、しかし、顧客へのサービスが“過剰”になって、メニューを拡げ過ぎてもまずい結果になる。

やはり、業態のフレームを逸脱しないということが重要なわけで、これはもう一方の考え方からすれば、顧客ニーズを特化していけば、その先の問題として新業態の開発も可能ということだ。

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