高度成長する惣菜・デリ 不況下に人気呼ぶ「屋台村」「ザ・めしや」
九〇年代に入り、外食産業は様々な意味で大きな局面を迎えている。バブル崩壊後の個人消費の低迷は、かつてのグルメ・高級ブームを沈静化させ、高級ホテルをはじめとしたフランス料理店、イタリア料理店、日本料理店などは軒並み苦戦を強いられる結果となった。一方、ファミリーレストラン(FR)、ファーストフード(FF)といった業態も、消費不況に加え、スーパー・CVS等の惣菜・デリの台頭で業態転換を迫られるほどの打撃を受けている。
消費者の食行動は「低価格志向」「お手軽感・お値打ち感」が優先されるため、バブル時代のそれとは大きく様変わりしている。ホテル・レストランでのメニュー価格引き下げや「食べ放題・飲み放題」の実施など、外食各社ともお客の呼び戻しに懸命だ。
こうした不況下においても順調に業績を伸ばしている業態・企業がある。今回は、その中でも特に人気の高い居酒屋「屋台村」と和風レストラン「ザ・めしや」の二つの事例を紹介することにしよう。
居酒屋「屋台村」は、いまや首都圏だけでなく、地方へも広がりをみせており、女子大生・OL層、ヤングサラリーマン層のアフターファイブのスポットとして爆発的人気を博している。この“屋台村ブーム”に火をつけたのが、東京・世田谷区に本社を置く一龍グループ。従来、ラーメンやおでんなどの移動屋台を営んできた会社だ。
屋台は本来、ラーメン、おでん、お好み焼きなど単品ごとの出店であるが、新業態「屋台村」は一箇所にラーメン、おでん、お好み焼き、焼き鳥、串かつ、中華点心類、すし、焼きそば、うどんなどの屋台メニューをフードコートスタイルで提供するというもの。一見して、学園祭の模擬店かあるいはお祭りの縁日のような空間を醸し出している。シンガポールやバンコクの屋台街に通じる雑踏感、人間臭い雰囲気は、FRやFFの型にはまったサービスにうんざりしたわれわれに何とも言えぬ新鮮味を与えてくれる。また、屋台ならではの店員との気軽な会話もコミュニケーション強化に役立ち、固定客獲得に寄与している。
自然体が身上の屋台ではあるが、フードコートスタイルに落とし込むにはそれなりの仕掛けがある。店内スペースの規模にかかわらず、可能なかぎり椅子を多く配し天井を低く設けることで、にぎわいと一体感を演出しているわけだ。
また、居酒屋でありながらフードメニューのバリエーションが豊富であることも特徴だ。平均客単価は約二八〇〇円。メニュー単価は若干高めに設定されている。街中の屋台や赤ちょうちんと同レベルでは、逆にターゲットとする若いOL層やサラリーマン層の支持が得られない。言わば、学園祭のにぎわいは、単に人が集まっているだけのことではなく、同世代の同志が集まっているからこそ生まれるという論理だ。
同店のシステムは、まず入店すると伝票プレートを受け取り、自分の食べたい屋台に行って好きなものを注文する。焼き鳥の屋台に座わって、おでんを注文してもよい。グループ客はフードコートの中央にあるテーブル席を利用できる。精算は入店時に受け取った伝票に自分が注文したメニューと価格のチェックを入れてもらい、レジで精算するという仕組みである。
一方、大阪に日常的ランチ需要を狙ったカフェテリアスタイルの郊外型和風レストラン「ザ・めしや」がある。その経営母体のライフフーズは大阪、奈良、兵庫、京都など関西エリアに三一店舗を出店、総売上高約六〇億円の実績を上げている。
その基本コンセプトは「大衆食堂の定食」、一品一二〇円~四五〇円の様々な主菜、副菜を品揃えし、お客が自分で好きなものを取り、最後にご飯とみそ汁を付けてレジで清算する。言わば、和風カフェテリアレストランというわけ。平均客単価一〇二〇円、一店当たり平均年商は二億二〇〇〇万円前後。
人気の秘密は何と言っても豊富な和風惣菜を自分で選べる楽しさにある。外回りのビジネスマンやトラック運転手ばかりでなく、地域住民の日常的ランチニーズまでも取り込むことができ、しかもカフェテリア方式を採用することで、メニューに飽きさせず、月に何度も来店するリピート客を多く持っていることが特徴。ここに現在苦戦しているFR、FFとの大きな違いがある。
八六年12月の奈良・橿原の第一号店以来、地道な出店展開で順調に売上げを伸ばし、今後は関西エリア以外への進出も予定されている。まず関西エリアで六〇店舗、首都圏で一二〇店舗、中京エリア三〇店舗が二一世紀に向けての目標数値である。既存のFR、FFが足踏みする中、「ザ・めしや」の出店展開はますます加速しそうな勢いだ。
居酒屋「屋台村」は、いまや首都圏だけでなく、地方へも広がりをみせており、女子大生・OL層、ヤングサラリーマン層のアフターファイブのスポットとして爆発的人気を博している。この“屋台村ブーム”に火をつけたのが、東京・世田谷区に本社を置く一龍グループ。従来、ラーメンやおでんなどの移動屋台を営んできた会社だ。
屋台は本来、ラーメン、おでん、お好み焼きなど単品ごとの出店であるが、新業態「屋台村」は一箇所にラーメン、おでん、お好み焼き、焼き鳥、串かつ、中華点心類、すし、焼きそば、うどんなどの屋台メニューをフードコートスタイルで提供するというもの。