施設内飲食店舗シリーズ 新羽田空港ターミナルビル 飲食店数も3倍に
9月27日、新羽田空港ターミナルビル(正式名称/東京国際空港西旅客ターミナルビル)がオープンした。昭和58年から一兆一五〇〇億円の巨費を投じて、既存空港ビルの沖合い約三㎞を埋め立てて計画を進めていたもので、敷地面積約三万坪、建築面積二万六〇〇坪、延床面積八万八〇〇〇坪、地下一階、地上五階(一部六階)建てで、一棟の建物では日本最大の施設規模を誇る。
単純にいえば現ターミナルビルの約三倍もあるというスケールで、滑走路に面して建つ空港ターミナルの横の長さが八四〇mもあり、これは銀座一丁目から八丁目の距離に匹敵する大きさだという。
あと僅かで一㎞におよぶ施設規模というわけだが、上空から見たターミナルの姿が大きな鳥が翼を広げている形に似ているところから、「ビッグバード」という愛称がつけられている。
しかし、施設規模があまりにも大きいために、目的の場所にたどり着くのがひと苦労で、初めての利用者はとまどいがあるようだ。
羽田は国際線が成田に移るまでは日本の空の玄関として、内外の航空需要に対応していたのだが、施設の老朽化と狭隘化で、拡大する航空需要に追いつかないために、施設の拡充化、システム化が望まれていた。
羽田の利用は年間四二〇〇万人(一日一一万六〇〇〇人)。わが国の国内線利用者数は年間約七〇〇〇万人というから、実に六割が羽田に集中している。
このため、国と東京都の施策として、混雑緩和と同時に騒音対策の「羽田空港沖合展開事業」が策定されて、平成2年8月から工事がスタートし、新ターミナルと滑走路の建設が進められていた。
新ターミナルは「利便性」「機能性」「経済性」の三つの要素を基本理念として施設計画が具体化され、ハイテク国ニッポンにふさわしい最新技術を駆使したエアターミナルが完成している。
空港の最大機能は出発と到着だが、新ターミナルではこの二つの動線を分離する目的で、“二層方式”にして、出発が二階、一階が到着と専用フロアに分けた。
羽田に乗り入れているエアラインは、日本航空(JAL)、日本エアシステム(JAS)、日本トランスオーシャン航空(JTA)、全日本空輸(ANA)、エアーニッポン(ANK)の五社だが、二階出発ロビーではこれら航空会社のチェックインカウンターがひと目でわかるように標示、レイアウトしている。
また、新ターミナルには二四の搭乗ゲートと三六基のボーディングブリッジが設けてあるが、出発時の手続きから搭乗までが単純で、かつ最短の動線となるよう工夫がしてある。
もちろん、到着機能においても同様で、動く歩道やエスカレーターを利用して、手荷物受取場や一階ロビーにスピーディに移動できるフロア設計になっている。
スピーディな移動といえば、従来の浜松町からのモノレールが新空港の地下一階に直接アクセスして、二階ロビーにエスカレーター(四基)で直行できるほか、羽田駅地下二階には京浜急行の空港線も乗り入れており、横浜および蒲田方面からのアクセスも容易になっている。
◆目立つ老舗・有名店舗
これら基本的な空港設備に加えては、物販、飲食店舗で構成するショッピング&グルメゾーン“ガレリア”(物販、飲食各一四店)をはじめ、多目的ホール“ギャラクシー”(一四二坪、三〇〇~四五〇人収容)、会議室“シリウス”(三二坪、六〇人収容)、“オリオン”(同、三〇人収容)、展望デッキ“バードアイ”(六階)、ビジネスコート(インフォメーションセンター、旅行センター、銀行、郵便局、証券情報センター、理容室、診療所、歯科医院、他)、エアポートラウンジ(三階、一人一回一〇〇〇円、ソフトドリンク込みの有料施設、シャワールームも完備‐使用料一回一〇〇〇円)などの商業ゾーンを形成し、日本最大のターミナルシティとしての機能を発揮している。
物販、飲食分野も老舗、有名店舗の出店が目立つが、とくに物販については、四階フロアに三越(輸入雑貨)、高島屋(特選雑貨)、大丸(輸入洋品、雑貨)、和光(紳士・婦人服飾品、インテリア小物)などの大手デパートおよび専門店を集積し、街中と変らないショッピングゾーンを訴求している。
飲食分野(別掲‐計五九店)は、地下一階六店、地上一階九店、二階一九店、三階一四店、四階三店、五階七店、六階一店と各階に出店する形になっており、旧羽田空港に比べ三倍もの出店数となっている。
店舗出店においては、本格的な食事ニーズや宴会利用に対応した和洋中のレストランもいくつか存在するが、やはり業態として目立つのは軽食・喫茶、ビアパブ(ブラッスリー)、ラーメン、そばショップなどで、場所柄利便性とポピュラリティに主体をおいた店舗構成となっているようだ。
事実、店舗のサービス形態としては、カフェテリアやセルフサービスの店も多く、価格的にも六〇〇~一〇〇〇円、二〇〇〇円前後、またメニューも麺類やパスタ、カレー、D丼物、サンドイッチ、セットメニューとライトミールが主体になっている。
しかし、テナントとしては銀座ライオンをはじめ、プロント、つきじ寿司岩、銀座木屋、ロイヤルデリ(ロイヤル)、翡翠宮(ホテルセンチュリーハイアット)、BONNE AILES(ホテルパシフィック)、鉄板焼炉暖(八芳園)などの名の通った店舗も多く出店しており、それぞれに集客力を発揮している。
五九店舗のトータルの客席は不明だが、一店舗平均五〇~一〇〇席と仮定すれば、三〇〇〇~六〇〇〇席。これは空港利用者数一日一一万六〇〇〇人の一、二割が飲食店舗を利用するとすれば、約一万二〇〇〇人以上飲食利用で、すなわち、最低でも一日四回転の客数が来店するということになり、空港利用の全体数からみれば、妥当な数字とみることもできる。
また、飲食店舗五九店全体の平均客単価を一〇〇〇~二〇〇〇円と仮定すれば、一日一万二〇〇〇人の客数に乗じる売上げは、日商一二〇〇~二四〇〇万円、年間四三億円から八六億円前後の売上げと試算できる。
これらの数字はあくまでも仮定の数値であるが、基数が正しいとすれば、年間売上げは倍の一七〇億円台ということも考えられる。