高度成長する惣菜・デリ 「すかいらーく」新生き残り策
外食企業大手の㈱すかいらーく(本社‐東京都、茅野亮社長)が前代未聞のリストラ策(事業再構築)を打ち出した。主力のファミリーレストラン(FR)「すかいらーく」715店舗の約3割の200店舗を、今年末までに低価格レストラン「ガスト」に業態転換するものだ。
FR「すかいらーく」は、これまで約一〇〇品目のメニューと客単価一〇〇〇円を維持しながら拡大してきたが、バブル崩壊後の景気低迷で、ファミリー層の来店頻度が減少し、平成4年12月期決算では、売上高が過去最低の一・五%増にとどまり、経常利益は昭和57年の株式上場以来初めて一五・一%減となった。FR「すかいらーく」の「ガスト」への業態転換は、低価格指向を強める消費者を呼び戻すための苦肉の策というわけだ。
同社はFRにとどまらず、消費者の外食ニーズの変化に対応してさまざまな新業態店を開発してきた。ディナーレストラン「イエスタディ」、アメリカンスタイルのコーヒー&レストラン「ジョナサン」、和食レストラン「藍屋」、中華レストラン「バーミヤン」などがそれである。
また、中食マーケットの拡大にもいち早く対応している。ニューデリカ食品「ボンサンテ」ブランドを開発し、会員制宅配事業の「フレッシュすかいらーく」によって無店舗販売を手掛けたり、ニューデリカショップ「オープンセサミ」を首都圏中心に約五〇店舗出店している。
同社は二一世紀に向けての長期経営計画「CRC21計画」に基づいて、先に挙げたように業態の多角化を積極的に進めてきたわけである。事業の枝葉は確かに広がった。が、経営の根幹をなすFR「すかいらーく」自体の抜本的見直しは、いまだ手をつけられずにいた。今回のリストラでは、まさにその心臓部分にメスを入れようという大きな決断を下したのである。
「単にバブル崩壊後の消費不況によって経営不振に陥ったのではない。FR自体の存在意義が消費者ニーズから次第にズレてきた。そのことに気付きながらも抜本的な対応策が打てずにいた」との同社の弁に、今日の外食企業が潜在的に持つ大きな課題と対応の遅れを感じさせる。
リストラの柱となる「ガスト」は、一年以上前から実験を続けてきた新業態店。客単価八〇〇円に想定し、メニューは三五品目に絞り込んだ。「ハンバーグステーキ」三八〇円。「カニコロッケ」四八〇円など、FR「すかいらーく」の半値近い価格設定だ。このプライスラインを見る限り、まさにCVSの弁当、惣菜類との競合を意識していることは明らかだ。
また、箸、フォーク、コーヒーなど飲料類は全てセルフサービス方式を採用。フード以外のサービス部分が外食の大きな差別化点であったが、セルフ方式となれば、ますます惣菜・デリショップに近い存在になっている。
これまでの「ガスト」実験店では、FRに比べ客単価は下がったものの、来客数は三〇%近い増加。ローコストオペレーション化で利益率もアップし、多店舗化に向けてようやくGOサインが出せるレベルになったということだ。
今回のリストラ策が成功するか否かは、現時点では何とも言えない。しかし、外食のリーディングカンパニーである同社の大きな決断は、業界全体に大きな波紋を投げかけている。「主力ブランドのスクラップ」を勇気ある決断と評価する一方で、ディスカウントストア、アウトレット、オフプライスという流通トレンドに対応しただけで、長期的ビジョンに欠けるという厳しい意見も多い。しかし、今回の「ガスト」への業態転換は、「実質本位」「お値打ち感」重視といった、顧客ニーズへの対応を最優先に打ち出している点で高く評価できる。
外食産業は、確かに食の外部化、レジャー化の傾向の中で拡大してきた。しかし、地域のFRには、都市型トレンド店や専門店のような“ハレ”の部分が乏しく、“ケ”の場でしかない。わざわざ食べに行くだけの魅力が希薄化しているのである。日常的食需要はむしろ、同じ商圏内のスーパー、CVSの手頃な惣菜・デリに向けられている。その開発コンセプとがまさに、先の「実質本位」「お値打ち感」重視をキーワードとしているわけである。外食企業のリストラ推進において、惣菜・デリ市場の動向は、目が離せない存在になっている。













