シリーズ・繁盛店の厨房(3) 厨房の面積「やや狭い」が便利
飲食店の売上高は、客席数で決まるとした考え方がある。これは客席数に回転率を乗じて算出するという、飲食業をスペース業とした捕え方である。
もう一つは、客席がそれほど多くなくても、客単価を上げて、少ない客席をカバーする、効率に重点をおいた考え方で、都市部においてはこの考え方が優先するであろう。
ところで、昔からフリー客を対象とした店舗の場合、客席に厨房などを含めた全面積の 1/3を厨房にすると、バランスの良いお店になるといわれる。単純献立ならこれより少々狭く、大衆料理店のような複雑メニューの場合は、少々広く厨房面積を確保しなければならないという基本的な考え方である。
また、全面積の一坪(三・三㎡)当たりどうしても一席以上の客席を見込まないと、経済効率を圧迫するという風習があり、これも一つの店舗造りの歯止め効果になっている。
一方、アメリカのチェーン店から始まったといわれる、パートなどを主力としたシステムの場合、どうしても専用機器を多く使う関係と、体格が大きい人種のためか、全体面積の 1/2を厨房とする基本的な考え方がある。
今ここで言っている厨房面積とは、当初の全体計画に線引きする便宜的面積のことであり、本来のそれは、店づくりのすべての条件を完璧に把握して、メニューに合致した必要諸機器を、使い勝手が良好にレイアウトされた場合であるのは言うまでもない。
業種別の実際の厨房面積の定め方には、統計数値や、経験値がしばしば使われ、実際はある種のあいまいさから出発して、厨房設計者が中心となり、建築サイドと、それに使用者との合意調整によって定まるのが一般的厨房レイアウト決定のプロセスである。
《科学的な結果 判定の方法も》 と、書き進めてくると、かなりいい加減な進行とみえるが、科学的な結果判定の方法がないわけでもない。それは少々逆説的な結果からみたものであるが、上掲のような計算式が用いられる。算定条件として、単純な長方形の平面形であることが基本で、過不足のない機器選定がなされたものとしている。
例えば、小厨房の場合は3.0以上で、大厨房の場合2.0以上の系数を使う。この計算式は、適切に配置された、各々の厨房機器の前に、整然と有機的に連携している動線通路の空間と、占有して床面を使用している厨房機器との比較によって、厨房面積の良否を判断するものである。
実際的にみて、厨房は広すぎるのより、少々狭いぐらいが使いやすいといわれる。
K4=Cm4×Kの公式で厨房面積を求める
K4は主厨房面積㎡
Cm4は各厨房機器の床占有面積㎡
Kとは係数で、2.0、2.5、3.0、3.5となる。
(厨房コンサルタント・島田稔)