シリーズ・繁盛店の厨房(7) 人体動作と調理作業
飲食店の運営を円滑に行うには、厨房の作業動線や、サービス動線を十分に検討して、従業員の働き易い環境づくりが重要である……等々。安易に知ったが風なことをよく耳にするが、「どうしたら働きやすくなるのか」深く追求した答えはとんと聞かない。
そこで、今回から、どうしたら働き易い厨房になるのかということを検討してみよう。
一般的に言って「働き易いとは」、人の動作が身長その他身体各部の仕組みと非常に関係が深いということである。特に調理操作の場合は、各自の身長の高低差が動作に関係することが大きい。
なかには人体動作と身長が厳密に影響を受ける作業と、それほど大きな影響を受けない作業とがあるのは言うまでもない。
総じて、繰り返す労働の場合は厳密さが必要である。しかし、一般的な建築や設備に必要な寸法は、多人数、不特定多数が使用するものであるから、標準的(平均的)な寸法になるのはやむをえないとしている。
例えば、作業台の高さの標準が八〇㎝とすれば、平均身長一六〇㎝を基準として、肘を曲げた高さに連動した、身長の 1/2が根拠となっているのは広く知られている。
と、言うのは、作業台の上をそのまま使うことはほとんどなく、爼板とか鍋類など必ず何かをのせた姿で作業するのが前提であることを踏まえた寸法である。
近年は平均身長も伸びているので、作業台の高さは五㎝ほど高く設定されている傾向にある。
また、厨房の入れ物である建築各部の空間が、人体の諸動作に密接な関係があることは言うまでもない。だからといって、人体の諸動作の寸法そのままが建築各部の寸法となるわけでもなく、建築や設備のおのおのの寸法決定の要件で定められていることを、ついでながらふれてみよう。
それは厨房機器の寸法や、施工習慣は左記のような諸点を勘案して定められている。
① 人体の諸動作を基準として
② 使用材料規格寸法から
③ 他の部分との寸法関連から
④ 視覚的見地から
⑤ 習慣を加味して
⑥ 経済性を加味して
⑦ 各機器の入れ替えと増設の便宜性から
以上のような設定要件の中で、最も働き易いという条件を備えているのは、①の人体の諸動作を基準としているのは言うまでもない。
厨房コンサルタント
島 田 稔