特集中国料理店:注目の若手料理人・日比谷園調理長・平馬直志氏

1997.04.21 125号 12面

「厳しい環境に飛び込んだことで四川料理の素晴らしさをあらためて実感できた。責任者としてのやりがいも強まるばかり」

東京は青山、「日比谷園」の平馬直志調理長の胸中である。

平馬さんは現在三七歳。「新京」「天山」「パストラル」を経て、一昨年前同店の料理長に就いた。以前のホテルに比べて厨房環境は著しく軽装であるが、オーナーからはホテル以上のおいしさと値打ち感をテーマに課せられている。

セールスメニューであるビジネスマン向けのランチ、女性向けのオーダーバイキングをこなすべき頼りの綱は、いままでに培ったアイデアと技術だけ。「どんな食材でも多数の調理工程でおいしく仕上げてしまう四川料理の技術があるからこそ通用する」といってはばからない。

あえて厳しい環境に挑戦したのは先輩の一言がきっかけ。

「あれこれがないからできないというのは半人前。与えられた条件のなかで最高のものを作り出すのが本当の職人」といわれ奮起した。

「厳しさを乗り切るたび、責任者、一人前としての実感が沸く。自分で店をやりたいという気がますますふくらみますね」

いまや過酷な状況も経験の積み重ねとして楽しんでいるようである。

「基礎を前提にどれだけ時流に合わせられるかが勝負」というのが料理の持論。ヘルシーニーズを第一ととらえ、野菜豊富なランチ、魚介類主体の一品料理を志向している。中国料理には珍しく女性客が七割にも達するという。

「厳しい環境は若手育成に最適。私自身だけでなく若手を上手に引っ張って行くことが大切ですね」とは最近の課題。環境にもまれてのレベルアップは当分続きそうだ。

◆「日比谷園」(東京都港区青山一-二-三、電話03・3401・3710)=営業時間午前11時45分~午後3時、午後5時~10時30分、日曜定休

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