トップインタビュー ニュー・トウキョー社長・森 紀二氏 緩やかに、着実に・・・
‐‐一昨年に恵比寿ガーデンプレイスに七業態・二〇〇〇席からなるスーパーレストラン「ビヤステーション」を開業して一躍注目を浴び、今年はすでに東京国際展示場ビックサイトに大型カフェレストラン、本店地下に本格的ビアホール、そしてビヤステーション横浜、ビヤステーション両国と続々大型店をオープン、酒場・ビアホール業態の雄としてますますその地位を確かなものにしています。まずは、社長に就任されての抱負をお聞かせください。
森 当社は来年で創業六〇周年を迎えます。この間、一貫して「都市生活者に対して飲食を通じて楽しさと憩いを提供」「社員一人ひとりが大切に育てられ生かされること」の経営理念を貫いてきました。
現在、グループは一〇社、全体の売上げは年間四七〇億円、二〇〇店舗、約一〇業態からなります。年間延べ来客数は約三〇〇〇万人です。
時代の動きや人々のライフスタイルの変化をいち早く察知した店舗展開をめざし、年間六~七店新店を出して二~三店を閉店しています。今年は特にたくさん出店しているのでやる気満々に見えるのかも知れませんが、たまたま現象として現れただけで、経営方針は変わっていません。企業理念に基づいて緩やかな拡大をめざします。
‐‐新店では大型の企画提案型店舗が目立ちます。
森 恵比寿や横浜、両国のビヤステーションのように都市開発に基づく大がかりなものをデベロッパーが求めた場合、請け負える日本の企業は限られてきます。ホテルはステータスはあるが食の算盤が危ない。一連のビヤステーションシリーズは当社とサッポロビール(株)、(株)サッポロライオンとの合弁会社である(株)新星苑が企画開発して運営しています。
‐‐今後の中・長期展望をお聞かせ下さい。
森 飲食営業形態のトレンドはサイクルが短く、経営環境も明るさが見えたといわれるものの、横ばいの中で将来を見通した事業展開を推進するために「NICE WAY 21」プロジェクトを進めています。
飲食事業のみならず、さまざまな営業形態の企画・開発を行うソフト事業、コントラクト・フードビジネス事業(運営受託事業)、食材の開発・販売事業などの飲食周辺事業も含めた事業領域の整備・再構築を図るというものです。これによってグループがより充実した総合外食企業となることを考えています。
具体的には昨年、事業の二方向(地域ブロック体制・チェーンオペレーション体制)をより明確にし、本社組織の機能統合を目的とした機構改革を実施しました。
今年に入りビヤステーションシリーズに代表される「スーパーレストラン」の展開も事業の三方向目として加えています。また、資材購買・物流部門を昨年独立させて(株)エヌティー・トレーディング・コーポレーションを設立しました。
‐‐将来的な売上げ目標や出店目標はいかがですか。
森 企業ですから当然利潤追求はしますが、当社のめざすところはあくまで飲食を通じ「楽しさ」と「憩い」の提供。業績より顧客の満足を優先します。日本一おいしいビールや焼き鳥を作ることは手段で目的ではありません。多業態を揃えているのもさまざまなライフサイクルに応えるためです。
‐‐8月にオープンした両国のビヤステーションには初めて本格的な地ビールを導入しましたね。
森 恵比寿にも製造委託している地ビールをおいていますが注文の三五~三六%。一番出るのはサッポロ黒ラベル。あくまで「地ビールもありますよ」という形で、当社の場合、ビヤステーションでたまには変わったビールを飲みたいという時のためのビールという位置づけです。
地ビールを展開するにはよほどうまい物にしなくてはいけない。品質、味の一定化、ボリュームは出せるのかと採算を考えると問題は山積します。ただ、グループの中ではそこだけで飲めるという特別なカードを何枚か持っていたい。一店舗の価値としては薄いが二〇〇店舗から見た戦略としては価値があります。
両国ではサッポロビールと相談して役員クラスの技術者に来てもらっています。9月には初の地ビールが仕上がります。
‐‐どんな味のビールに仕上がるのか楽しみです。ありがとうございました。
「お店が開くというのはお祭り。おもしろい。社員はみんなお祭りが大好き」。スマートな風貌に似合わず熱血。昭和15年東京生まれ。成蹊大学卒。37年卒業と同時に第一ホテル入社。企画・建設に長く携わり60年ニユー・トーキヨーに取締役社長室長として入社。61年常務、63年専務、平成元年代表取締役副社長、8年3月五代目社長に就任。二代目社長森新太郎氏の次男。趣味は学生時代からのヨットと二〇年越しのウインドサーフィン。海の男である。(文責・福島)