世界の人気食材 ブロイラー=低コスト、高効率ともに肉類では突出
ブロイラーは若ドリと訳す。成鶏肉ではない。昭和の初め、鶏肉は三七五g一円、牛肉が〇・八円、豚肉が〇・六円と肉の中で最高値であったが、現在では最も安く、供給面でも最も安定している。
このブロイラーは、戦後アメリカで開発され大産業に成長した。九五年度の生産量は一一三五万t強となり、ついにビーフを抜いた。しかも九六年度の予測として、六・五%増の一二一〇万tとみて伸びの高い品目として注目された。
ところが今年に入って食肉の環境は一変、イギリスで狂牛病が発生、世界的に牛肉需要は停滞し、アメリカでは一〇年ぶりの安値となった。本来なら需要はブロイラーに移るはずであるが、原料が高騰をみて波乱状態である。
ブロイラーが大きく伸びた背景は(1)大量飼育に適している(2)短期間に成長し飼料効率が良い(3)飼料はコーン・ソイ(トウモロコシと大豆のミックス)でいずれも安い(4)主産地がコストの高い北部から南部に移り、生産費が大幅に下がった(5)原種鶏の改良が進んだ(6)淡泊な味が消費者のし好とよくマッチした、などである。
一般的に、肉一キログラムを生産するのに穀物の必要量はブロイラーで二キログラム、豚肉で四キログラム、牛肉で七キログラム必要とされ、牛肉は鶏肉の三・五倍も多く消費する。ブロイラーの優位性が理解される。
しかもブロイラーの栄養価は一〇〇g当たり一二〇キロカロリーで、タンパク質は二二・九g、脂肪は二・四gにすぎない。豚肉や牛肉などと比べるときわめて低カロリー、高タンパクなことが判明し、健康的な美容食品ともよべよう。
ブロイラーは水っぽいという意見が聞かれるが、逆に肉が柔らかいので消化にも良く、子供から老人まで、そして病人にも向く食品とされている。
調理のポイントとして部位別に、もも、手羽、ささみなどに分けられる。料理に向いた部位を選ぶことが大切。ももは味が良く、ささみは淡泊である。そして特性としてあっさりしている。
日本の在来種の比内鶏やコーチンなどはその持ち味で食べ、ブロイラーはつけ味で食べるように。ブロイラーのももはロースト、竜田揚げ、空揚げ、焼き鳥、チキンボールなどに向いている。香辛料や醤油などで下味をつけるのがコツである。
世界的なKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)も、チキンの臭みをとり、うまさを引き出すために一一種類のスパイスを使用するとある。また、今年春に売り出した爆(パオ)は、オレガノ、シナモン、ジンジャー、ガーリックなどの天然ハーブを飼料に加え、揚げて醤油味にするが、原価の安いブロイラーを巧みに料理している。
最近日本のコンビニも、売れ筋ナンバーワンが弁当で、メニューとして鶏肉系メニューが目立ってきた。
唐揚げ弁当、チキングリル弁当、チキンカツ弁当、とり天丼など。原価が安くボリュームがあって引き立つことである。しかも味つけをしっかりすると美味として、ファンは急増中である。
世界事情をみても、人口大国のインドはヒンズー教で牛肉を食べない。インドネシアやマレーシアは、イスラム教で豚肉を食べない。共通して喜んで食べているのは、鶏肉なのである。
インドではチキンカレー、タンドリチキン、鶏肉カツレツが、インドネシアでは鶏肉のココナッツ煮、鶏肉の串焼きが最高のメニューである。中国も炸鶏(フライドチキン)や炸丸玉(揚げだんご)、鶏粥などが喜ばれている。ブロイラーは世界の人気食材なのである。