めざすは一流MISS料理人:カプリチョーザ自由が丘店・田辺和子さん
「ものすごく忙しくて、皆で必死に仕事をさばいているときに、楽しい、と感じるんです」この4月で入社一年を経た田辺さんの実感である。時間が勝負の切迫したなかで、力を合わせて働く緊張感がたまらない。個人の力量とチームプレーがものをいう。これは小学校から高校までやっていたバスケットボールに近い感覚とも。
昨秋、カプリチョーザ溝ノ口店から自由が丘店に移動になり、サラダやピザ、パスタ、デザートとひと通りこなせるようになった。いま、塩ひとふりの微妙な差、味の加減を「難しい」と感じる時期に入っている。
平日のまかないも担当する。皆のリクエストを受け、予算内で買出しから担い、数人分を三〇分で仕上げる。イタリアンに限らず、中華や和食も守備範囲で、リクエストの多いのは田辺さん自身も好きな中華風の炒め物や辛いもの系という。
「調理師になろう」と決めたのは高校生のとき。調理、とくに人が料理している姿を見たり、食べ歩くことが好きだったため、迷わず誠心調理師専門学校へ。
「料理にはその人の生まれながらのセンスが出るものですね」と田辺さん。専門校時代の友人がいいセンスの持ち主で、就職先は違うものの、いまもたまに料理の腕を披露しあい、刺激を受けているそうだ。
店で田辺さんが心がけているのは、お客さまの表情をキャッチすることだ。カプリチョーザ自由が丘店の間取りは細長く、厨房から手前のテーブルの様子ならうかがうことができる。
「料理を口に入れた瞬間、どう感じたかは表情でわかります。とくに女性客ならなおさらですね」
だから「もし店舗を改造するのなら、もう少しキッチンから店全体が見渡せるデザインがいいですね。お客さまにとっても作る様子がわかったほうが楽しいはずですから」と田辺さんは考える。
同店はドレッシングやトマトソースの味に定評があり、リピートユーザーも多い。自由が丘という土地柄、若い女性向けのオリジナル料理、デザートにもどんどんチャレンジしている。支持されるメニューは何か、それをいち早くつかむのも大切なことに違いない。
「ずーっとずーっと先の夢ですが、無国籍料理のお客さまにとって居心地のいい店がもてたらいいですね」と田辺さん。まずはその前に「ここで長く働き続けること。いろいろなものを学び、吸収し、人間的にも成長すること」が当面の目標という。
◆シェフから一言
田辺さんは何事も吸収が早いですよ。それは一生懸命仕事に取り組んでいるからと思います。負けん気があるので注意もしやすい。確かに女性は男性に比べて力やスピードの点は負けますが、細かい作業や正確さでは上回る。これまでも女性の調理スタッフを何人かみてきましたが、基本的には男性と変わらないし、こちらも区別はつけません。物を動かすなど力のいるときは「男に声をかけろ」ぐらいは言いますが(笑)。