宅配ピザ店でモテモテ--「ガス着火式保温バッグ」

1999.06.21 180号 14面

宅配ピザ店の間で、ピザを熱々に保温する「ガス着火式保温バッグ」が話題になっている。スイッチ一つでガス着火、ヒーティングプレートを熱して、ホットバッグの中のピザを熱々に保温するものだ。長野オリンピック時、電機メーカーが選手村のフードケータリング用に開発したもので、それを流用活用したという。価格は一台二万円前後。燃料は三〇時間で七〇〇円前後。導入ユーザーの声を聞いてみた。

愛知県名古屋市を拠点に展開するピザパーティーは、クリスピークラストのオーダー増にともなう保温対策として、このほどガス着火式保温バッグをチェーン全七店に導入した。熱々保持はもちろんのこと、二枚持ち三枚持ちの配達にも大きな威力を発揮しているという。

「クリスピーニーズが一〇%から三〇%に跳ね上がったことが導入のきっかけ」(武内俊哉取締役統括部長)

「クリスピークラストは生地が薄いため、従来のホットバッグで保温しても冷めるのが早い。冷めるとクラストが蒸気を吸収して、生地がぐしゃぐしゃになってしまう。その打開策としてガス着火式保温バッグを採用しました。もとより“熱々を届ける”が宅配ピザ店のセールスポイント。お客様からお代をいただく対価でもありますから」

現在、一店舗につき五台導入し試験展開しているが、クリスピー対策のほか、二枚持ち三枚持ちにも貢献している。

「二枚持ち三枚持ちは、効率こそ良いが、後のが冷めてしまう両刃の剣。安易にできない。でも、ガス着火式保温バッグがあれば、後のをそれに詰めることで、熱々の二枚持ち三枚持ちが可能になります」

この試みは、熱々のピザを届ける基本回帰と位置づけているため、お客に対するパフォーマンスはとくに打ち出していない。が、「レベルアップは、ピザを受け取ったお客さまが一番感じているはず。リピーター増が楽しみです」と早くも期待に心を弾ませている。

山陰の冬は大陸からの風を受け、みぞれ混じりの日が続く。

「バイクを飛ばし、熱々のピザをお客に手渡した時、温かいね、の一言と満足気な表情をされると、思わず辛いことも忘れて良かったなーって思います」と語るシカゴピザ松江南店の高麗浩義店長。

大都市と違い住宅がまばらな地方都市・松江では、商圏も半径三キロメートルと広い。焼きたての熱々をいかに速くお客に届けるかは大きな課題。

これにこたえて登場したのがホットバッグ。いろいろ工夫が施されているが、「なんといってもカバーの材質がゴアテックスなので、箱が湯気で湿気を帯びず乾燥した状態にあること。それに今までのビニール製では、いつも水気を拭き取ってカビが生えないよう気を使っていた」と新商品の利点を生かしての切り替えには積極的だ。

シカゴピザ松江南店がオープンしたのは一一年前。高麗店長の実家の家業は、古くから学生服などを扱う洋品店。制服を電話一本で配達するのを見て、もっと効率の良い宅配はないのかと模索中、町の喫茶店で人気のピザに行き当たる。

「これを熱々のできたてで届けたい」と地方都市では珍しい宅配ピザ店を開業。当初は、はしがないか、箱をいつ回収に来るのか、ピザとはどんなものかなど、問い合わせの電話が鳴りっぱなし。

「それだけ珍しかったのでしょう。今では敬老会からも注文を受けるようになりました」と満面笑みの高麗店長。

ピザの味が普及するにしたがい、おいしい、焼きたての熱々をお客は求めるようになり、これにこたえる優れものとしてホットバッグは大いに活躍ができそうだ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら