季節を楽しむ漢方スローライフ(39)入梅
●入梅
恵みの雨に感謝して
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梅の実が熟し始める頃、長い雨期に入る最初の日が「入梅」です。暦の上では6月11日頃で、江戸時代、田植えの時期を知るために設けられたという説も。長雨をうっとうしく感じることもありますが、梅雨の雨は、田畑の作物を育む大切な自然の恵みです。梅酒を漬けたり、あじさいの花を飾ったり、気分をちょっと変えて、潤いの季節を楽しみましょう。
◆湿気と冷えは胃腸の大敵
しとしとと雨が降り続くこの時期は、湿気が多く、食欲不振や胃もたれ、軟便、手足のむくみといった不調を感じやすくなります。
これは、自然界の邪気「湿邪」の影響で、「胃腸」の働きが弱くなってしまうため。中医学では、脾(胃腸の働き)は「乾燥」した状態を好むと考えます。そのため、梅雨から夏の湿気が多い時期は、特に胃腸の不調が起こりやすくなるのです。また、胃腸は「冷え」にも弱いため、冷たいものの取り過ぎも大きなダメージになります。
胃腸は、飲食物の栄養や水分から、体内の「気(エネルギー)・血」を生み出す健康の源。育ち盛りの子どもたちにとっては、特に大切な臓器です。これからの季節、夏バテを予防するためにも、胃腸の健康を守るよう日頃の養生を心がけましょう。
◆胃腸に負担をかけない食生活を
胃腸ケアのポイントは、体内に「湿(余分な水分や汚れ)」をためず、胃腸を冷やさないこと。水分の取り過ぎに十分注意して、食事や飲み物はなるべく温かいものを取りましょう。また、油っこいものや糖分の取り過ぎも、胃腸の負担になるので要注意です。
中国では、夏でも温かいお茶が基本です。季節に合わせてブレンド茶を作ることも多く、胃腸を守りたいこの時期は、ハスの実と刻んだナツメを入れた緑茶が定番。ぜひ参考にしてください。
おすすめの食材は、胃腸の働きを良くする長芋、グリーンピース、大豆、じゃがいも、しょうが、鶏肉、そら豆、いんげん。体内の余分な水分を取り除くとうもろこし、緑豆春雨、緑豆もやし、はと麦、冬瓜など。
漢方では、軟便や下痢を伴う胃腸の不調に『イスクラ健脾散エキス顆粒』、食欲不振や胃痛などの緩和に『イスクラ健胃顆粒S』などがよく使われます。この季節のつらい皮膚疾患、水虫には塗りやすい軟膏の『イスクラ華陀膏』がお勧めです。
「監修」楊敏(中医学講師)
●ハレの日薬膳レシピ:「春雨と鶏ひき肉のピリ辛炒め」
胃腸の働きを良くする鶏肉と、体内の「湿」を取り除く春雨を使って
〈材料・2人分〉
・緑豆春雨…………………50g
・鶏ひき肉…………………80g
・たけのこ(水煮)………60g
・チンゲン菜………………1株
・グリーンピース(缶詰)…25g
・ねぎ(みじん切り)……1/4本
・しょうが(みじん切り)…1片
・豆板醤……………………小さじ1
・しょうゆ…………………大さじ1
・鶏がらスープ……………3/4カップ
・サラダ油…………………大さじ1
〈作り方〉
(1)春雨は熱湯に5分浸して水けを切り、食べやすい長さに切る。たけのこは4cm長さの細切りに。チンゲン菜は1枚ずつ水洗いし、葉と軸に切り分け、葉は4cmのザク切り、軸は縦に1cm幅に切る。グリーンピースは水けを切る。
(2)鍋にサラダ油を熱し、ねぎとしょうがを入れて炒め、香りが出てきたら鶏ひき肉を加えて炒める。肉の色が変わったら、たけのこと豆板醤を加えて全体に炒め合わせる。
(3)しょうゆと鶏がらスープを加え、沸騰したら春雨を加えて中火で5分煮る。チンゲン菜とグリーンピースを加え、チンゲン菜に火が通るまで炒める。
レシピ担当:鈴木理恵(国際薬膳師、管理栄養士)
●季節のオススメドリンク
イスクラ橘香茶 陳皮として知られるミカンの果皮のお茶
●豆類は、胃腸の働きを良くします。
カレンダーの中からハレの日や旧暦の行事を見つけたら、その由来をお話ししませんか。季節の移ろいを楽しみながら。