ヘルシートーク:料理研究家・植松良枝さん

2010.07.10 180号 05面
「なす牛丼」

「なす牛丼」

 料理研究家の仕事のかたわら、祖父母の畑で100種類以上の野菜を育てている植松良枝さん。一年一年、畑仕事をするうちに生まれた旬野菜のレシピ集『野菜畑の料理教室』が好評だ。いつも野菜とともにあるという日常を語ってもらいました。

 ◆自分で育てた野菜への思い入れはひとしお

 神奈川県伊勢原市の実家にはテニスコート6面ほどの畑があって、昔から祖父母が家族の食べる野菜を作ってきました。採れたての自家製野菜をふんだんに使った料理が食卓に並ぶ恵まれた食環境だったことが、私を料理研究家の道に進ませたのかもしれません。

 祖母を師匠に、私が本格的に野菜作りを始めたのは、独立とほぼ同時期の7年前。自ら畑を耕し、種を蒔く。そして成長を見守り、収穫して料理する。そんな日々を過ごすうちに、季節のめぐりや野菜の旬にとても敏感になったし、畑から持ち帰った愛しい野菜のおいしさをどう引き出そうか、と料理の心構えも変わっていきました。

 先日出版した『野菜畑の料理教室』には、まさに畑仕事からインスピレーションを得た80余りのレシピを掲載。春夏秋冬とじっくり1年かけて畑の様子を撮影し、季節ごとの野菜への思い入れも文章で綴った自信作です。ぜひ手に取ってみてくださいね。

 ◆醍醐味はさまざまな品種や成育段階を楽しめること

 今、畑は夏野菜の収穫真っ盛り。きゅうり、なす、トマト、ピーマン、ズッキーニ、さやいんげん、とうもろこし、オクラ…。一般的な野菜だけでなく、ゴーヤやモロヘイヤ、空心菜、つるむらさきなど変わった野菜もたくさん作っています。

 なすとひと口にいっても、米なすや丸なすなど、いろんな品種を植えます。去年初めて作った大長なすは、せいろで蒸したらトロットロに甘くなって絶品でした。皮も身もやわらかくて、辛子じょうゆだけでいくらでも食べられるんです。蒸したなすを冷蔵庫でキーンと冷やしていただくのも、この季節はおすすめ。うちでは「なすのお刺身」って呼んでるんですよ。

 野菜を成育段階ごとに楽しめるのも、畑をやっている醍醐味ですね。たとえばゴーヤ。普通の大きさまで育てないで、小指くらいの大きさで収穫しちゃうんです。これにみそをつけて食べると、ボリボリ歯応えがあっておいしいですよ。丸ごと炒め物にしたりね。

 野菜の花、たとえばルッコラやスナップエンドウの花が食べられるというのも発見でした。サラダに散らしたり、いろんな野菜と一緒にしゃぶしゃぶにしたり。ちょっと苦みがあって、料理のいいアクセントになるんです。

    *

 3年前に結婚してからは、世田谷のマンションと伊勢原の畑を行き来しています。マンションのテラスでも野菜や植物を育てていますよ。いまの季節はゴーヤ、ピーマン、プチトマト、食用ほおずきなど。豊作です。

 ●プロフィール

 うえまつ・よしえ 神奈川県生まれ。大学卒業時より料理研究家を目指し、様々な食の現場を経験。実家の畑での野菜作りはライフワーク。日本の旬を楽しむ食と暮らしを提案。野菜中心のヘルシーレシピは、たちまちメディアで評判に。著書に『畑のそばでうまれたレシピ 温かい野菜料理』(オレンジページブックス)、『デリおかずの人気レシピ』(成美堂出版)など。

 公式ホームページ http://www.uemassa.com/

 ◆なす牛丼

 〈材料・2人分〉

 なす……………………2本

 牛切り落とし肉………150g

 たまねぎ………………中1/2個

 しょうが………………大1片

 ごま油…………………大さじ1~1・1/2

 ごはん…………………どんぶり2杯分

 Aだし汁…………………3/4カップ

 Aしょうゆ………………大さじ2

 Aみりん…………………大さじ2

 〈作り方〉

 (1)なすはヘタを切り落とし、表面に5mm間隔で5mm深さの縦の切り込みをぐるりと入れ、3cm厚さの輪切りにして大きいものは半月切りにし、水に5~10分ほどさらす。たまねぎは5mm幅の薄切りに、しょうがは千切りにする。

 (2)(1)のなすの水気をしっかりと拭き取り、熱してごま油をひいた鍋で炒める。全体に油が回るまでしっかりと炒めて取り出す。

 (3)なすを取り出した鍋でたまねぎを炒め、たまねぎが透き通ってきたら牛肉を加えて炒め合わせる。

 (4)牛肉の色が変わったらAを加えてひと煮立ちさせ、(2)のなすを戻し入れて中火で5分ほど煮る。

 (5)なすがやわらかくなり、煮汁が半分くらいになるまで煮詰める。しょうがを加えてさっと煮て、火を止める。

 (6)どんぶりにごはんをよそい、(5)をのせる。

 レシピ=『野菜畑の料理教室』より

 ●『野菜畑の料理教室』

 ほとんど自分の畑で採れた野菜を使った料理は、どれも季節がめぐるたびに作ってきたものばかり。とことん旬にこだわった畑生まれのレシピ集。1628円(青春出版社)

 ●『使うものが一目でわかる菜園道具ガイド』

 植松良枝さんの野菜作りの様子を紹介しながら、道具選びや菜園作業のアイデアを伝授。1575円(美術出版社)

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