だから素敵! あの人のヘルシートーク:作詞家・阿木耀子さん
作詞に女優業にキラキラと感性を輝かせ続ける阿木耀子さん。もう1つの天性の才能が実は料理。ツヤツヤの肌もここに秘訣があるらしい。『今日からはじめる、5 A DAY! 野菜と果物は、あなたを 「もっと」元気にする』から、ちょっとこぼれ話を紹介したい。
我が家には冷蔵庫が4台あるんですけれど、いつも野菜でいっぱい。二人家族なのにどうしてそんなに? とよく驚かれますが、私の料理は8割が野菜。野菜や果物ってかわいいな、いとおしいなって思います。トマトを見てかわいい、おナスを見てなんて奇麗な色してるんだろうって。時々思うんです。大根とラブラブだなって。大根をすり下ろしている時、後ろから「あのネクタイどうしたっけ」なんて言われると、「もううるさい!いま、私は大根とラブラブしてるのに、主人たりともその間に入らないで!」なんて。
栄養素の何やとか、食物繊維をとろうとか、あんまり考えません。その時のひらめきで、例えば目の端にブドウが入ったら、豚肉と一緒に煮てみると案外と合うなとか。料理って思ってないのかもしれないですね。工作とか絵を描くような。キュウリがあるから春の小川の絵を書きましょう、みたいなイメージ。きょうはこのラディッシュのスライスのお魚を泳がせて…。そういう気持ちで食事を作ります。つまり趣味なのね。
全く才能がないなあと思うもの、たくさんあります。フラメンコは10年踊ってヒザを痛めて分かったの。その後プロデュースに回っているので、転んでもただでは起きないですけどね。いまはコーラス。結構のめり込むタイプなのでその時々、何かに熱中しています。けれど料理と作詞は一生。この2つだけは自分で才能あるなあって思います(笑)。作詞は天職と思っているけど、料理は本当に私にとって幸せのひととき。無になれるんです。余計なことは考えない。
新レシピはある日、落ちてくるの。作詞と一緒。夜中にパッと起きて、「絶対行ける! これはオイシイ!」って叫ぶの。だから食べる前に全部できてる。不思議な感覚なんだけど。好きだから、いつも考えてるからかもしれません。今度あれを材料にしようとか。タイトルが先に来る場合もあります。「下着を履いたトマト」とか「三つ編みのおひたし」とか。
ひらめいた中で我ながらなかなかと思ったのは、チンゲン菜の根っこの所をバラの花に見立てた1品。チンゲン菜を切ると、なんで根っこを捨てるのかなと思ってて。バラの花に似てるでしょ。グリーンの花弁の間に赤いバラの実を入れて。金串のバーベキューの野菜を全部立てて、クリスマスツリーにしてみたことも。トマト・タマネギ・ジャガイモ・ピーマン…、子供たちがいるととても喜びます。ケーキみたいな野菜だねって。
幸せになりたいのなら料理を作ってみて、と勧めたいです。料理は女性の最高の武器だと思うの。好きな人のために、おいしくて身体にいいものを供する幸せ。愛情のこもった料理を、一緒に食べる幸せ。愛してるというメッセージを、言葉以上の方法で、もしかすると言葉以上に、ストレートに伝えることができる、それが料理かも。
魔法をかけなくちゃ、といつも思います。どんなに高価な材料を使っても、作り手が「ああ、きょうは料理したくないな」という気持ちで作ったら……。大事にしたいのは、優しい気持ち、必ずおいしく作るぞという気概。
宇宙の中の地球の上でできた作物が与えられて、きょうも料理ができる、1食いただける。これは奇跡のようなこと。誰だって使える、幸せの魔法です。
◆プロフィル
あき・ようこ 横浜市出身。宇崎竜童と結婚後、彼が率いるバンド、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのために書いた「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家としてデビュー。その後山口百恵の曲を宇崎とともに作詞・作曲し、山口百恵の黄金時代を支える。近年は小説やエッセーも手がける。近著に初の長編小説「蘭・乱・らん」(主婦と生活社)。また東京・赤坂でライブビストロ「ノーヴェンバー・イレブンス1111」を経営。