リスク倍増!糖尿病と歯周病の深い関係

2004.11.10 112号 2面

糖尿病の人は健常者に比べ二倍強の頻度で歯周病が起きやすく、また歯周病の人は糖尿病の罹患率が約二倍高いとの報告がある。両者の相関関係、治療・予防法について、東京医科歯科大学大学院歯周病学分野の石川烈教授に聞いた。

◇糖尿病で歯周病が増える理由

血液中のブドウ糖(血糖)が必要以上に増え血糖値の高い状態が続くと、口の中にも多くの影響が及びます。

◆口の中が乾燥する

高血糖状態では、浸透圧の関係で尿がたくさん出るため、体内の水分が減少するとともにだ液の分泌量が減り、喉や口が渇く症状が現れます。

だ液には食べ物の消化作用のほか、口の中を浄化したり組織を修復する働きもあり、歯周病を防いでいますが、高血糖のために口の中が乾燥すると、その作用が低下します。

◆だ液などの糖分濃度が高くなる

口の中を潤すだ液や歯肉からの滲出(しんしゅつ)液は、もともとは血液から作られます。高血糖下ではだ液や滲出液の糖分の濃度が高くなり、歯周病の原因菌繁殖を進めます。

◆細菌に対する抵抗力が低下する

高血糖状態では、細菌と戦う白血球の働きが低下し、抵抗力が弱まり、歯周病をはじめ、さまざまな感染症にかかりやすくなります。

◆合併症の影響

血糖コントロールが乱れると全身の血管に障害が起き、さまざまな合併症の主因となります。特に細小血管が集まる歯周組織では影響が現れやすく、血流量低下から感染が長引いたり、組織の修復が遅れたりします。また骨粗鬆症も糖尿病合併症で、歯の土台の骨が減少する病気である歯周病をさらに助長させます。

◇歯周病で血糖値が上がる理由

◆細菌感染がインスリンの働きを阻害

一方、歯周病は感染症。口の中に住み着く細菌が炎症を引き起こし、歯周組織を破壊する病気です。元来ヒトの身体には、細菌などをシャットアウトする精巧な感染防御システムが備わっており、サイトカインというさまざまな生理活性物質を分泌し炎症を治そうとします。しかし皮肉なことにいくつかのサイトカインは、血糖値を下げるホルモン・インスリンの働きを阻害します。当然、血糖値は上昇したままになります。健康な人ならすぐ膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げるよう働きますが、糖尿病の人では血糖コントロールがうまく働きません。歯周病は風邪などと違い慢性の感染症。放置すればインスリンの働きを常に妨げることもあります。

◆歯が抜け、食べ物をよく噛めない

歯周病が進行して歯がぐらついたり抜けると、固いものが食べられず噛む回数が減り、よく噛まずに飲み込んでしまいがち。

こうした食べ方は、食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」を起こす一因になります(繊維質の食品は食後高血糖を抑える働きがある)。

◇怖い“合併症”

歯周病の人の口は、いわば傷口が開きっぱなしの状態。そこから細菌が血液に乗って全身を巡り臓器や血管壁にたどり着くと、毒を出し炎症を起こす。ふつうの細菌は、血液に触れると白血球などの働きで殺菌される。しかし歯周病菌は、血液とほぼ同じ成分の歯肉溝液で育つ菌なので血液中でもなかなか死なず、心臓や脳・子宮など全身へ深刻な影響を与えることがある。

◇糖尿病と歯周病の主な合併症

◆糖尿病

網膜症、腎臓病、神経障害、動脈硬化、心臓病、脳卒中、感染症、歯周病、高脂血症、高血圧、骨粗鬆症、高血糖昏睡、妊娠による糖尿病悪化や胎児・母胎のトラブル

◆歯周病

歯が抜ける、糖尿病、動脈硬化、心臓病、脳卒中、肺炎、妊娠による歯周病の悪化や早産・低体重児出産

◇糖尿病も歯周病も生活習慣病

◆糖尿病を招く生活習慣

運動不足・食べ過ぎ・飲み過ぎ(特に糖分)、精神的ストレスなど

歯周病を招く生活習慣

◆不完全な歯磨き、喫煙、甘いもの・軟らかいもの・間食を好む、口呼吸(鼻でなく口で息をする)による口の乾燥、歯ぎしり、精神的ストレスなど

◇舌がひび割れ痛むドライマウスって?

糖尿病の人には、だ液の分泌が少ないドライマウス(口腔乾燥症)がよく見られる。ドライマウス専門外来を担当する志村デンタルクリニックの志村真理子副院長は「口の中が乾燥すると、舌がひび割れヒリヒリ痛む、唇や頬の内側粘膜が荒れるほか、味覚異常などの症状が現れます」。

だ液の減少は自浄作用の低下をもたらし歯周病と糖尿病をより悪化させ、食べ物がうまく食べられないことは食事療法の妨げにも。「ドライマウスの治療には、乾燥を防ぐ保湿ジェルやスプレーなどを用います。糖尿病の人はやはり血糖コントロールとプラークコントロールが不可欠。ドライマウスは、更年期の女性に多く現れる症状でもあり、薬の副作用やシェーグレン症候群などの疾患も原因となるので、軽視せず検査を受けましょう」。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら