百歳への招待「長寿の源」食材を追う:キク

2004.02.10 103号 7面

キク(菊)とキンカン(金柑)はともに中国から伝えられたものだが、その歴史は極めて古い。このため知名度は抜群。キクは菊酒や菊花茶に利用。前者は強壮・健胃、そして抗早衰によい。この薬茶は疲労回復によい。またキンカン酒はカゼに卓効がみられる。さらに健胃整腸にも向く。手近な庶民の保健薬として愛用をおすすめする。

(食品評論家・太木光一)

キクはキク科の花だが、チギリグサ・モモヨグサなど長寿にちなむ名前で呼ばれている。中国では重陽花・佳友などの異名があり、不老長寿の霊草として敬愛されている。中国である程度、園芸的に発達したものが、八~九世紀ごろに日本に伝えられた。江戸中期には栽培が非常に発達した。

食用キクは料理キクとも甘キクとも呼ばれ、花は黄または白色の舌状花からなり苦みが少なく香気がみられる。花弁をゆでて酢醤油であえたり、天ぷらなどに利用され、蒸して乾かしたものはきくのりとして酢のものにする。

生花の成分は一〇〇グラム当たりカリウム二九〇、マグネシウム二三、亜鉛六五〇、銅一四〇(いずれもミリグラム)で大変ヘルシーだ。

『中薬事典』では効用主治として清熱・明目・解毒・治歯痛・心胸煩熱ほかをあげている。庶民的な薬草と呼べよう。採取のタイミングは9~11月にかけて、花が開き芳香のある時が望まれる。

薬膳食法として菊花酒・菊花茶がある。

菊花酒は花の色、漬け込む量、部分などでそれぞれ異なるが、おおむね淡黄色から淡いこはく色に美しく仕上がる。ひめやかな苦味が魅力のポイント。材料として、菊花二五〇グラム(色は白・黄・赤のいずれでもよい)、グラニュー糖またはハチミツ四〇〇グラム、ホワイトリカー(三五度)一・八リットル。作り方は、キクの花びらを枝からとってよく水洗い。そして水をよく切り、材料を広口のびんに入れ、約一カ月ほど冷暗所で貯蔵。布でこして別のびんに移しかえて飲用する。

一日当たり三〇~五〇グラムが適量。ストレートによくカクテルにしてもよい。芳香性精油・カロテン・アントシアニンほかを含む。強壮・健胃・疲労回復・鎮痛・鎮静・頭痛などに効果的。さらに抗早衰・養肝腎にもよいとして注目されている。

キクの花は漢方で菊花という生薬名で取り扱われ、白菊・貢菊・抗菊などが含まれている。

中国の薬学書の古典『本草綱目』に菊花は頭目風熱を解し肝を平らかにし、目を明らかにする効用があるとしている。

菊花茶を常用することにより目の疲れやかすみ目、老眼や白内障の予防・改善に効果が大きいとして愛用をすすめている。

昔から菊花を枕や布団に詰めた菊枕や菊布団は不眠を解消し精神安定にもよいと固定ファンもみられる。菊花は食用に、薬酒に、薬茶にと利用範囲が広く手近な薬食材といえよう。

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