百歳への招待「長寿の源」食材を追う:タンポポ
タンポポは野草として知られているが、驚くほどの薬効植物で世界的に広く愛用されている。健胃薬として知られ、薬茶・薬酒にも利用、ファンの多い薬草だ。手軽であり、いろいろの面でのご愛用をお勧めする。オカヒジキは伝統の野菜だが、最近になって人気がリバイバル。料理面の利用も広く、成分に優れ、しかも保存性も良く、もっと活用したい野菜といえよう。
(食品評論家・太木光一)
タンポポはキク科の多年草で春の野草として親しまれているが、驚くほど利用価値の高いハーブの一種だ。
日本では「蒲公英」と書かれているが、英語では葉の形状から「ダンディライオン」と呼ばれる。全草に薬効が高く、特に根が強いという。品種が非常に多く、本州中部から北海道にみられるエゾタンポポ、本州中部に多いカントウタンポポ、関西から九州に多いカンサイタンポポなど。ヨーロッパ原産のセイヨウタンポポは最近都市周辺部に急増している。
耐寒性が強く、根は直根で深く地中に入り、根ぎわに多くの根出葉を広げる。花は一般に黄色であるが、白色・淡黄色もある。
食べられる部分は根生葉や若葉・花・根に至るすべての部位で、一般には春3~4月と秋9~10月が適している。野生のものはやや堅く、しかも苦いが、ヨーロッパ種は改良されて、野菜としても適している。
また春の寒い頃にロゼット状になった葉をナイフで切りとり、ゆでて醤油とカツオ節で食べると捨てがたい味となる。この場合、熱湯に塩ひとつまみを入れてゆで、二~三時間水に放つ。苦味がほど良く残る程度がポイント。
成分としては、葉にはビタミンA・C、鉄分、カリウムが多く、世界的に薬草として愛用されている。タンポポ茶はハーブティーの中でも効用が高いことで知られている。
苦味健胃薬として胃炎や消化不良によく効く。また緩下作用もあって便秘にも良い。さらに利尿作用も高く、体内の分泌・排出を営む器管の働きをよくする。茶として苦味は少ないが、ハチミツを加えると一段と飲みやすくなる。このほか胆石・腎臓結石にも良いとされ、黄疸・肝炎など肝臓や腎臓にも効果がみられる。さらに解毒や強壮・神経痛やリウマチなど関節炎にも良く、幅広い薬効がみられる。
漢方でも「蒲公英」と書き、苦味性健胃薬のほか消化不良・慢性胃炎・利尿・便秘などに良いとしている。この場合、根を水洗して日干しにしたものが用いられている。
ハーブティーをつくる場合、前述の全草利用もよいが、日常利用するには地上部のみが手軽だ。葉を集め水洗して一~二分間蒸気を通し天日乾燥を十分にする。また根も用いる時は二~三ミリの厚さに切り同様に蒸気を通して十分に乾燥すること。乾燥品の飲み方は一グラム程度五〇〇ccの熱湯を注いで五~一〇分間煎じるとよい。
薬用酒にも利用される。葉・花・根などいずれもよくホワイトリカーに漬け込むと前述の薬効が期待される。生葉一四〇グラムに対しリカー七二〇ccが目安で、ほぼ二カ月ぐらいで熟成する。
このようにタンポポは日本全土に分布し雑草のようにみられがちだが、利用価値は食用だけでなく、薬効も極めて高いものがある。しかも全世界的に認められている。葉と根は染料にもなり、美肌づくりの浴用剤にもなる。真価を見直す必要がある。