おはしで防ぐ現代病:ヨーグルトに含まれる乳酸菌「ロイテリ菌」に虫歯予防効果
ヨーグルトに含まれる乳酸菌には、さまざまな健康効果があることが知られている。中でも「ロイテリ菌」には、最近の研究から虫歯菌の発育を阻止し殺菌する効果が認められた。この研究・発表を行った広島大学歯学部附属病院義歯インプラント科の二川浩樹講師に聞いた。
口の中にはたくさんの菌が棲んでいます。中には、歯周病や虫歯の原因になる悪い菌もいて、この菌が増え過ぎると、身体の免疫力が低下し、全身に悪影響が及ぶため軽視できません。
こうした虫歯のリスクを下げる効果が、ヨーグルトの成分・乳酸菌の一種「ロイテリ菌」に確認されました。私たちの実験で、同じ濃度のロイテリ菌と虫歯菌を三対一の割合で混ぜたところ、一時間半後には、虫歯菌の約九割の死滅が確認されたのです。
また、培養した虫歯菌に、ロイテリ菌入りヨーグルトと、その他二〇種の乳酸菌入りヨーグルトを付着させたところ、ロイテリ菌入りだけに繁殖を阻止する効果が認められました。
さらに、一組二〇人の二グループに、それぞれロイテリ菌入りヨーグルトと、加熱処理して乳酸菌を殺したヨーグルトを一日一回、二週間食べ続けてもらい、だ液を調べると、ロイテリ菌入りのグループは虫歯菌が平均五分の一に減少。逆にもう一つのグループは増加しました。さらにその後、虫歯菌が増えたグループに、ロイテリ菌入りヨーグルトを同期間食べてもらったら、虫歯菌は平均三分の一に減りました。
このロイテリ菌の虫歯予防効果は、歯磨きとの併用で、さらに高まります。ふつう口中の悪玉菌は互いに共生し、虫歯や歯周病のもとになるバイオフィルムを形成します。歯磨きでそれらを壊しこすり取ってから、ロイテリ菌を投入すれば、ロイテリ菌の働きがより良くなり、効果も高まるのです。
ロイテリ菌のパワーは、脳疾患や高齢などで嚥下(のみ下すこと)が困難な人の口腔衛生にも役立ちます。嚥下障害などによる誤嚥性肺炎や、口内のばい菌による各種感染症を防ぐのに有効です。今後、ロイテリ菌を効果的に含む食品がさらに多種開発されることが望まれます。
◆ラクトバチルス・ロイテリ菌
哺乳類の胃腸管内などにみられる乳酸菌。特に母乳や赤ちゃんのおなかの中に多く、赤ちゃんが高い免疫力を持つのは、このロイテリ菌のお陰ともいわれる。胃酸・胆汁に耐え腸まで到達すると、バクテリアやウイルスなどの有害菌の活動を抑制しながら、善玉菌と共生し腸内細菌のバランスを改善する。免疫力を高め、高脂血症改善など健康への有用性や安全性も確認されている。スウェーデン・バイオガイア社はじめ、世界に広がる研究ネットワークで、この優れた乳酸菌のさらなる効果解明が続けられている。