あした天気になあれ、雨の中でも熱中症

2000.06.10 57号 5面

一週間から一〇日遅れ気味だそうだが、今年も梅雨の季節がやってきた。

梅雨といえば湿気。人間が快適と感じる湿度は六五%程度まで、それ以上になると段々不快になってくる。関東近辺では、5月後半になると平均湿度が六五%を超え、10月後半までそれを割らないそうであるから、日本の夏がいかに湿っぽいものか分かるだろう。

ジメジメした湿気は、気分を落ち込ませるが、それだけでなく肉体的な体温調節機能にも悪影響を与える。人間は肝臓や脳などの臓器の活発な代謝や筋肉の運動で熱を発生させ、一方、末梢血管を広げたり狭めたりして空中への放熱を調整して、一定の体温に保っている。さらに、放熱しにくくなるほど気温が上昇したり、仕事やスポーツで大量に熱が発生したときは、汗をかきその汗が蒸発するときの気化熱によって巧みに体温調節を行っている。ところが湿度が高いと、汗をかいても汗は蒸発しにくくなり、当然体温も下がらず、そのために熱中症になってしまうこともあるのだ。

雨具の着用が多い梅雨時の登山でも、それには十分に気をつけなければいけない。なぜなら、真夏はギラギラの太陽が暑さに対する注意を自然に喚起し、帽子をかぶったり風通しのいい服装にしたり、水分の補給にも気を使うのだが、梅雨時の雨の中では、雨具の着用でより蒸し暑いうえ、湿気があるためにのどの渇きに鈍くなって、水分補給を忘れがちで、体温調節がうまくいかなくなり、めまいや吐き気など熱中症の初期症状を発生させる人が多くなるからである。

ところで、汗のかきかたは人それぞれで、同じように歩いていてもTシャツを絞るほどかく人がいるかと思えば、少し濡れる程度で済む人もいる。登山経験的には、汗っかきの人の方が、なんとなく体力が不足しているように思われ、ガイドとしては気にかかることでもあるので、果たして発汗とスタミナとの間でどのような関係があるのかと、いろいろ資料をひもといてみたが、特に相関関係は見つけられなかった。

汗をかくということは新陳代謝が活発だということだから、それだけではとくに問題ではなく、失われた水分やミネラルを補給すればいいということらしいのだが、いまひとつハッキリしない。もう少し突っ込んだ研究がないものかと、資料を探し回っているところである。

(日本山岳ガイド連盟

認定ガイド 石井明彦)

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