百歳への招待「長寿の源」食材を追う:虎枝

1999.04.10 43号 11面

日本の民間薬には山野草にはいるものもある。ドクダミ・オオバコ・イタドリ・イノコズチなど。しかしこれらは日本薬局方にも記載され漢方薬材としては貴重なものが多い。

(食品評論家・太木光一)

虎杖は歴史の古い山野草で清少納言の「枕草子」にも出てくる。また俳句の季語として春の部に入れられている、タデ科の多年草である。

分布は、中国では江蘇・浙江・福建・山東・河南・湖北・四川・雲南と広い。日本では全域にみられ、そのほかの東アジアにもある。

虎杖を日本語でいえばイタドリ、中国語でいえばプーザァンとなる。イタドリの名前は痛み取りが転化して名付けられ、すり傷・切り傷などに若芽をもんでつけると止血と痛みを和らげるのに卓効があることによる。

草丈が一・五メートルにも達し、日当たりの良い道端・土手・山野などに自生する。7~10月ごろに開花するが雌雄異株である。

虎杖の可食部は若芽と若茎。まだ葉の開いていない茎であれば、サラダをはじめ揚げ物・煮つけ・和え物・漬け物などに向く。ただ蓚酸が含まれているので多食は禁物である。

中国では根を貴重な薬材とする。採取は地上部が枯れ木質化した根を乾燥させたものを虎杖根として用い万能薬視する。

薬効として、風を去り、湿を利し、血の巡りの悪さを治し、経を通す。リウマチによる筋肉疼痛、月経閉止、痔ろう出血、やけど、打撲傷、心腹の脹満、排膿、咽喉疼痛、リウマチに良いとある。渇きを止め熱毒を抑え気力を増す効果も。外用により水虫を治すなどの効能も有している。

日本でも民間薬として利用している。根を掘り洗って干し煎じて飲んでいる。薬効として緩下剤(一日一五グラム煎用)とするほか、利尿剤にも利用、とくに消化不良にも効用ありとする。

虎杖の栽培法は自生の山間地の畑を開墾すると、切断されて残った根茎からいつまでも芽を出し除去するのに骨が折れるほどである。排水さえよければ土質を選ばず非常によく生育する。鉢に押し込んでおくだけでも生育を続けるほど強い。

種子繁殖は4月中旬ごろ、穴ごとに八~九粒をまく。根分け繁殖は発芽前に株を掘り根茎を一五~二〇センチに切り、深さ一〇センチほどの地中に植える。性状はきわめて強く繁殖力も大。薬効が極めて高く利用範囲が広いのに、高い評価のないのは希少性のないことによる。また中国では日本のように生食はなく薬材として利用する。

中薬大辞典には、数ページにわたって薬効が詳述されている。

それによると(1)抗菌作用の強いこと。二五%煎液はぶどう状菌をはじめ大腸桿菌ほかに対して抑制作用が強く働くこと(2)抗病毒作用のみられること。一〇%煎液は流感やニキビによいとするデータもある。

そしてこの薬効面で(1)火傷による緑膿菌(2)急性黄だん型伝染性肝炎(3)関節炎(4)慢性骨髄炎(5)肺部炎症(6)慢性気管炎などの諸病治療の成功例が記されている。

伝統ある山野草であるが近代医薬にも劣らない手軽・安価な漢方薬材である。

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