百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「カモミール」不眠症やカゼ治療に
カモミールは現在ブームをよんでいるハーブティーの中で最も人気の高いものの一つ。本来は丈の低いリンゴの意味を持つカモミーラに由来する名前である。
ハーブティーの歴史は古く、紀元前三千年の古代メソポタミア時代に遡る。古代エジプト人も愛飲したという記録が残っている。薬のない時代、各家庭の常備薬として利用されていたのだから、その薬効は歴史が証明しているといえる。
リンゴの風味に似たカモミールティーは金色のお茶を思わせる。消化を助け、腸の働きを活発にする作用があるので食後に飲まれている。また鎮静作用があるため、不眠症の人は就寝前に飲むと良い。発汗作用の働きでひき始めのカゼの治療や解熱効果もみられる。特に身体を暖める作用もあり冷え症の人々にも喜ばれている。
味は芳香性のほか、ほろにが味があり、これが消化不良にもよいとして常飲される場合が多い。従ってさまざまな民間療法のほか健康茶として昔から現代に至るまで伝えられている。
原産はヨーロッパの大部分の地域と北アジア地方。各地で野生しているものもみられる。学名は子宮に良いという意味のマトリカリアが属名で日本薬局方にも記載されている。
カモミールはキク科の一年草で、草丈は三○~五○cmほど。細く裂けた葉はコスモスに似ており、茎の先につける径二・五cmほどの白い花はデイジーに似ている。花の姿は太陽のようで、エジプト時代には太陽神に捧げる貴重な花としてあがめられていた。また白色ばかりでなく品種によっては黄色い花もみられ、これは染料として使われている。
花には芳香があり、これを蒸溜すると香りの成分である揮発性の高い芳香油がとれる。種々の薬用以外にリキュールの香りづけにも利用。さらに開花したものを適宜摘み通風の良い所で乾燥させる。これがハーブティーを始め、ハーバルバス(入浴剤)、ポプリ(叢い袋)、ピロー(枕に入れるもの)などの原料にされる。
ハーブティーのいれ方でドライハーブ(乾燥品)またはフレッシュハーブ(生)をポットに入れる。前者は一人前で小さじ一杯ほど、後者は小さじ三杯が目安。熱湯を注ぎ五~一○分おいてカップに注ぐ。好みで蜂蜜やレモンを入れてもいい。夏には冷やしてアイスティーもおいしい。
カモミールは身体を暖めたり、皮膚をしっとりとさせる働きがあるためハーバルバス剤としても人気が高い。布袋に入れ身体をマッサージすると、肌をひきしめ若々しくする作用がある。気分も爽快にさせる。
カモミールはドイツ人の最も好むハーブで健康食品店での売れ筋ナンバーワン。薬効や美容面でも優れた効果がみられ、女性特有の諸症状にもよく効くのでムッテルハーブ(母なる薬草)と呼ばれる。
世界的にヘルシー志向が高まり、カモミールの人気も長く続いている。