百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「サクラエビ」

1997.01.10 16号 14面

いくら卓越した効果の長寿食といっても、あまりにも価格が高い特殊なものでは長続きはできない。今回の登場は、そんな心配は全く無用のポピュラーな食材の代表選手。カルシウムなどの栄養満点。にらとさくらえびは、日常の食生活に毎日たくさん摂っていただきたい。

(食品評論家・太木光一)

「さくらえび」は、生きている時、身体が半透明な桜色をしているところから名付けられたもの。体長は四~五センチメートルぐらいで、雌は雄より少し大きいのが特徴である。車えびに近い品種で、皮が薄く、身体の表面に一五〇カ所ほどの発光器があって、頭から尾にかけて連続的に光る。光は弱い緑黄色で、多数群がって光る。

日中と月夜には一五〇~三〇〇mぐらいに生息し、やみ夜には七〇~八〇mぐらいの海面に浮かんでくる。この時に揚繰り網をおろして漁獲する。

さくらえびは日本の特産品、産地も駿河湾の富士川河口・由比・蒲原に限定されている。海から揚げると、瞬間に美しいピンク色に変わる。最も滋味を増すのは4月の桜の花見ごろである。

とりたての生は、丸味があってトロッと甘く、非常に美味であるが、現地でなくては味わえない。加工に回されるさくらえびは釜揚げ・素干し・煮干しなどにされる。

サッと熱湯でゆがいたのが釜揚げで、現地で食べれば塩味も少なく、思わず大きな鉢いっぱいも食べられる。しかし傷みやすいので、宅急便で翌日届くぐらいまでが、配達可能地域である。さくらえびは味がよく、色どりも美しいので利用価値は極めて大きい。栄養面からみても、優れた食品とよべよう。成分表によると、一〇〇g当りカルシウムが七〇〇ミリグラムと突出して多い。まさに王者級である。

日本人の食生活は、すべての栄養素を摂り過ぎの傾向であるが、カルシウムだけは不足気味。成人の場合体重の約二%がカルシウムで、その九九%までが骨や歯に含まれている。カルシウムが不足すると、骨のカルシウムが減り、骨が弱くそしてもろくなる。これが骨粗鬆(しょう)症で、女性に多くみられる。骨折や腰痛、寝たきりの原因となる。

また血液中のカルシウムは、血圧調整に大きな役割を果たす。カルシウム不足は動脈硬化のもとともなる。別の表現をすれば、老化を早める要因とみられている。若いうちから、老化防止のためカルシウムをとることが必要である。

流通しているさくらえびは、かつて煮干品が主流であったが、最近では釜揚げの需要が高まっている。また素干しや煮干しは一年中出回っている。

食べ方として焼きそばや炒飯、卵焼き、五目飯の具、三杯酢、かき揚げなどに利用されている。釜揚げは茶碗蒸し、おろし和え、天ぷら、サラダ、グラタンなどに向いている。産地の静岡県由比町では、さくらえびを使った名物料理があり、お通し、刺し身、かき揚げ、沖あがり、吸い物などで人気を呼ぶ。

タンパク質も牛豚肉なみで、肉嫌いのお年寄りによい。長寿食品ともよべよう。そして独特の香りがあり、さくらえびを入れると味が一段と引き立つ場合が多い。欠点としては、豊不漁によって価格変動の激しいことである。

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