だから素敵! あの人のヘルシートーク:炎の料理人・周富徳さん

1996.09.10 12号 4面

夏の疲れが身体に残りがちな時期。上手にこの季節を乗り切るための食事法といえば、やはり中国の薬膳。中華の達人といえばやはりこの人。というわけで今月は炎の料理人・周富徳氏の登場だ。テレビにイベントに飛び回る周富徳氏の一日のスケジュールを聞けば、まるで目の回る忙しさだ。そうした日常の中で、あの元気な笑顔をキープする食べ物術をじっくり伺おう。

朝ご飯からして僕は自分で作るよ。6時半に起きて犬の散歩に行って帰ってきてからね。何を作るかって? 中華風雑炊を作ったりパンを焼いて食べたりね。台所にあるもので作る。和食も好きだよ。焼き魚とかおみそ汁とか単純なものがいい。えっ、中華以外も作ったり食べたりするのがビックリしたって? 当たり前でしょ、僕は日本の横浜生まれなのだから(笑)。

おみそ汁は、具沢山のものが好き。豆腐とか油揚げとか野菜とかをいっぱい入れる。ダシはカツオダシ、あとニボシでとったりする。カツオブシはちゃんと台所に削り器があって、毎食ごと自分で削る。僕はカツオブシ削るのもうまいよ。オカカは小さい頃から好きでご飯にかけて食べていたから。イタリアンならパスタ料理とかね。ミートソースとかケチャップ系をよく作る。

僕の一日のスケジュールが知りたい? そう、じゃあ昨日の例でいこう。朝はいつものようにゴールデンリトリバーの散歩に行って、そのあと中華のお雑炊を作って食べてきた。朝食がすむと、横浜の自宅まで、その日の仕事によってどこかしらの車が迎えに来てくれるのだけど、きょうは日本テレビで「ごちそうさま」という番組を二本撮りに行った。終わってすぐまた車で移動、午後はみんなの前でお料理教室をやってね。そのあと夜もまたイベントが一本。翌日の今日昼も大宮の同じホールでイベントだからホテル泊まりで寝たのが12時。そしたら友だちの送別会が新宿であるから来いって呼び出されてねぇ。仕方ないよ、そういうつき合いは。タクシーで新宿まで行って結局ホテルに帰ってきたのは朝(笑)。

まあ毎日メチャクチャ忙しいよ。でも昨日の夜のコースはちょっと特別で、普通は12時には目をつぶっちゃう。五~六時間はちゃんと寝ているよ。身体を調子よくしておくために、睡眠は大切。きちんと寝てきちんと食べていれば絶対大丈夫。きちんとおなかがすくということがなによりの健康のバロメーターだよ。夏の疲れが抜けない、食欲が出ないなんてダメですね。

それではこの季節、夏の疲れを身体に残さないようにするための中国式食事法をお話ししよう。残暑の季節、身体には熱がこもっているからね。食事によってこれを中和するメニューを考えたい。

薬膳の基本的な考え方にはね、食べて身体が熱くなる熱性のものと温まる温性のもの。身体が涼しくなる涼性のものと冷える寒性のもの。そのどちらにも属さないもの。大別するとこの三つがある。そして味にも、肝臓と胆のうに作用する酸っぱい味、心臓と小腸に作用する苦い味、脾臓と胃に作用する甘い味、肺と大腸に作用する辛い味、腎臓と膀胱に作用する塩辛い味の五味がある。それらの性質をよく理解して、状況に応じてメニューを考えるわけなんだ。

だから、身体に熱がこもっている残暑の季節のいまは、微寒、つまり涼から寒の間の少し身体を冷やす食べ物をとるのがいい。たとえば冬瓜とかウリとかヘチマとかセロリ、大根、ナス、ナシといった素材だね。調理方法としては家庭ではスープなんかがいい。特別な調理法を考えることはないよ。

気をつけなくてはいけないのは、いくら身体を冷やす食べ物がいいといっても、あまり冷やし過ぎてはいけないこと。クーラーに当たり過ぎたり冷たいものを摂り過ぎたりするのは身体によくない。クーラーの当たり過ぎは自律神経に影響するし、冷たいものの摂り過ぎは脾臓や消化器官を傷め、アレルギーの原因になる。

微寒の素材を使いながらも冷やし過ぎが心配な時は熱性のショウガなどを入れるといいね。

中華料理のレパートリーでいうと、そろそろ上海ガニがおいしい季節だけれどこのカニというのもとても身体を冷やす。だからカニを食べる時には熱性のショウガ汁を飲んだり、ショウガのタレでカニを食べたりするわけ。カニで中毒を起こした時もショウガ汁を飲むしね。

忙しい毎日だけど、将来はこんな暮らしがしたいな‐という夢はいつも描いている。どんな夢かって? 実はね、ペンションがやりたいんだ。いい素材が手に入るから海のそばがいいね。メニューはもちろん中華だよ。僕が商売で洋食なんてやったってしょうがないでしょ。中華のペンションというのはあまりないからね、面白いと思うよ。そんないい夢を実現するために、忙しくてもいまが頑張り時だと思っている。

周富徳氏が総料理長を務める埼玉・大宮の広東名菜王宮では、毎月一回、周富徳氏本人による料理教室を開催している。

テレビに映る周富徳氏そのまま、ユーモアたっぷり鮮やかな手つきで作り方を披露、毎回人気メニュー三品を実演する。その後はそのメニューを組み込んだフルコースをいただく昼食会もある。

講習会費およびフルコース代は六〇〇〇円。入会金二〇〇〇円で料理教室の会員になると、メンバーズカードの発行のほか、王宮利用時一〇%の割引などのサービスがある。

問い合わせは、048・648・0090

○周さんのおすすめ料理 冬瓜入り五目スープ

==材料(4人分)==

・ハム‐‐5g

・豚肉‐‐60g

・しいたけ‐‐1個

・カニ肉‐‐15g

・あひる肉‐‐10g

・冬瓜‐‐150g

・砂肝‐‐10g

==作り方==

(1)フライパンにお湯を沸かして、ハム・豚肉・しいたけ・カニ肉・あひる肉・砂肝をボイルする。

(2)油・湯・冬瓜の中に(1)を加えて、とりがらスープ大さじ1と塩少々を加え、冬瓜がやわらかくなるまでコトコト煮る。

(3)しょう油少々を加え、最後にごま油を1、2滴加える。ザーサイを角切りにして最後に入れてもよい。

◆プロフィル

43年横浜中華街生まれ。一八歳から「虎ノ門中国飯店」を皮切りに料理の道に入り、「京王プラザホテル」では副料理長、「聘珍樓」「璃宮」では総料理長を経て、昨年7月に東京・青山に「富徳」を開店。埼玉・大宮の「王宮」ほか全国数ヵ所に顧問をする店を持つ。

テレビにおいてもテレビ東京の若者向け番組「浅草橋ヤング洋品店」に出演後、人気が爆発。鋭いカメラ目線がバシッと決まった姿で現在、日本テレビ「ごちそうさま」などに出演中。ベストセラー「NHKきょうの料理シリーズ 周富徳の広東料理は野菜がうまい」「同 周富徳の覚えて得する広東のおかず」(ともにNHK出版)ほか、著書も多数。

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