検証と対策 水を考える カルキ臭こそ安全の証
防災の日を前に、各地で災害時に備えて水を蓄えようという呼びかけが盛んに行われている。ありがたいことに水不足の心配はとりあえずお預けとなっている今日現在だが、一方でO157騒動の影響で水の安全を危ぶむ声もあがっている。
「今まで飲んでいて異常がなかったのだから大丈夫だろう、と思い、何の措置もとらないまま使用し続けた」。一九九〇年10月、浦和市代山の「しらさぎ幼稚園」で園内の井戸水を飲んだ園児二人が病原性大腸菌O157に感染して死亡した事件を起こした当時の園長の弁である。
事件から六年、O157が指定伝染病に指定されるほどの猛威をふるういまになってやっと、この事件に有罪判決が下った。しかし「大丈夫だろう」と思ってしまうのは私たち日本人皆に言えることではないだろうか。
安全な水とのつきあい方について、東京都立衛生研究所の上村尚氏にうかがった。以下その要旨。
今年6月、埼玉県の越生市で市営水道にクリプトストリジウムという原虫が入りこみ、その水を飲んだ市民が下痢などの症状を訴えるという中毒事件がありました。
井戸水はダメ、水道水もダメといわれると、「じゃ、いまや安全なのは、ミネラルウオーターか」と、ペットボトルの天然水などをやたらに買い込む人もおりますが、消費者が便利な世の中に慣れるあまり、金さえ払えば身は安全、と信じこんでしまうのにも問題がある。
“食アタリに水アタリ”は昔からあった言葉で、ふだんの生活から食中毒の時期にはとくに気をつけることは常識だった。
それがいまや食中毒の起こりうる時期は通年のこととなっている。人間が暮らしやすくなることは、細菌にとっても住みやすい環境が整ったということなんです。
カルキくささ・塩素の身体への影響など敬遠されがちな水道水だが、日本の水の安全が保たれているのはこのお陰。家庭で水を蓄える際は、まずポリタンクの中をよく洗浄する。水道水を入れて一日置いておくだけで、残留塩素の働きで中の微生物を殺菌することが出来ます。
つぎに、水道水をタンクの口切りいっぱいに入れる。空気を遮断して、冷暗所に置いておけば、二、三週間たっても飲むことは可能。問題になっている大腸菌などの微生物は塩素が効いていれば完全に死滅します。正しい知識を得てそれを実践することが大切です。