教えてあなたのオフィス:鹿島建設編 緑と香りの職場オアシス

1996.05.10 8号 6面

一日のうち、どこで過ごす時間が最も多いだろうか? もし家にいるなら家、車に乗っているなら車、会社にいるなら会社、どこにいようと長時間過ごすスペースだからこそ快適に過ごしたいと誰もが願うだろう。家や車なら自分で快適に変えることができるが、企業に所属する多くのサラリーマンが自分の職場を快適に変えていくのはなかなかむずかしい。そこで今回はオフィスビルのモデルとなるような職場があるとのうわさを聞きつけ、突撃インタビューにでかけた。そこは東京の高級料亭街として名高い赤坂……。

◆自由な発想で設計

今回の訪問先は建設業界の大手、鹿島建設(株)。八九年3月にオープンしたこのビルは「オフィスビルの見本となるようなビルを目指しました。鹿島自身が設計し、施工し、使用する、だから自由にやりたいように建てたビルなんです」と語るのは、今回案内をしてくださる広報部岩本豊さん。受付で待っていてくれた岩本さんと一歩、二歩と進むにつれ驚きが増す。

奥行きのあるロビーはホテルのような、いやそれ以上の緑、ミドリ、みどり。「オフィスに観葉植物を」なんて少し前にはやったが、これはレベルが違う。「ここにある植物は亜熱帯植物です。強いし、枯れないし、常緑です。沖縄から運びました。水は上からやるのではなく下に配水システムが整っています」

なるほど、毎日ホースやじょうろで水やりをしていては大変な仕事になってしまう。

見事な緑の他に水も流れ小さな噴水もある。「ここは打ち合わせや商談、それに社員の休憩のスペースです。この水の音は雑音を消す役割もあります。商談中など隣の人の声が聞こえると落ちつかないでしょう。ちょうど心地よい音に聞こえるように計算されています」

このビルのコンセプトはアメニティーとコミュニケーション。アメニティーとは快適な環境のこと。ビルの中でも主役は人間。人が快適に働くためにアメニティーは不可欠な要素だ。

同様にコミュニケーションも仕事の効率を高めるために重要な要素と言える。

「人間は縦への動きを得意としない。上の階や下の階への連絡はつい面倒になる。でも横へはスムーズに動けるんです」。このためこの建物は高さよりも広さを追求している。

人が仕事をするためにどうあれば最も快適かを考慮し見本となるビルが建てられた。

◆遊びゴコロの発想

視覚的に快適なだけではない。入口を入った時から何となく感じていたが、何やら香りが漂っているような…。「時間帯により流す香りは違います。4時の今はフローラルな香りです。これは資生堂さんと香りの研究をしていて、オフィス内に香りを流すことはできないかと試みたんです。ここで働く社員に香りについてアンケートを取ってみたら不快だと答えた人はゼロでした。気分がリフレッシュする、集中力が増した、などの回答があり、まずは成功ではないかと思います。お取引先さまにもおすすめしています」

なぜここまで快適さを追求するのか。「このビルは建築設計本部と土木設計本部が入ってます。これらの仕事は創造性が重要ですから、じっと机の上で考えていてもいいアイデアは浮かばない。何かぶらぶらとしている時に、そうだ!なんて思い浮かぶものでしょう。そういう環境がないとダメだと考えたんです。もし総務関係や経理関係の部署が入るのなら、また違ったコンセプトで設計しますよ」

◆デートスポット!?

ルーフガーデンと呼ばれるオアシスもある。お昼時間にはここでお弁当を広げる女子社員や外の空気を吸いながら一服したい社員が集まる。いまの時期は花壇に花が咲き、すぐそばに東京タワーも眺めることができる絶好のロケーションだ。

もし企業の建物でなければ「恋人と行きたいデートスポット」にランキングされるに違いない。

社員食堂にも案内していただいた。カフェテリア方式で好きなものを自分で選ぶスタイル。受付業務担当の相原るりさんも「おいしいです。昼食はほとんど毎日社員食堂で食べていますよ。常時和・洋・中と揃っていてメニューにカロリー表示もされていますから安心して食べられます」と評判がいい。

現在はインテリジェントビルの定義があいまいとも言う。「情報化社会に対応したビルでないとだめです。それはこれだけOA化が進むとテクノストレスというのが発生してしまう。テクノストレスを解消する機能もビルのなかにあるべきなんです。OA機器に人間が使われては困る。あくまでもOA機器は人間の仕事をサポートする物。作業は機械にやらせて創造は人間がするようでないと意味がないんです」

ここで働いていると気持ちがいい、会社にくるのが苦痛でないという状態を作り出す環境がベストだという。

ここまでの快適な職場環境はとうてい望めなくとも、自分なりの職場オアシスを作りだすことが快適さの第一歩と言えるだろう。

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