百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「ローヤルゼリー」

1996.03.10 6号 14面

カットは蜜蜂の8の字ダンス。蜜源を発見して巣に帰った個体(中央)は8の字を描くように歩きまわり他の働きバチに蜜源の位置を教える

(食品評論家・太木光一)

ローヤルゼリーを日本語でいえば王乳となるが、一般的には英語名の方が知名度が高い。この存在が知られるようになったのは一六世紀に入ってからである。

現在のブームの因は一九五四年のこと。ローマ法皇ピオ一二世が老衰のため臨終となった時、主治医がローヤルゼリーを思い出し治療して法皇は見事に蘇生した。

これを学界に発表し、ローヤルゼリーは人体の成長を助け、強い殺菌力を持ち、人体の健康を増進し、人間の寿命を延ばす力を持つとした。そして法皇自らも蘇生体験を発表し一大センセーションを巻き起こした。

ローヤルゼリーとは生まれて三日目から一三、四日目までの働き蜂の頭部にある咽頭腺という器官から分泌される濃い乳白色の物質を指す。蜂蜜とは全く異なり、味も独特の酸味と渋味があり甘さはみられない。

このローヤルゼリーは女王蜂の幼虫のための飼料で、同じ卵から孵化した幼虫が働き蜂となるか女王蜂に育つかの分かれ目となる。成虫となった女王蜂は一生与えられるのである。

同じメス蜂で働き蜂は産卵不能で寿命はわずか一ヵ月あまり、一方、女王蜂は三倍も大きくなり、普通は三年、時には五~六年も生き続ける。女王蜂は二四時間に一五〇〇個の卵を生み続けるが、卵の総重量は体重にも匹敵、この驚異のスタミナ源がローヤルゼリーなのである。この中に秘薬的な成分があるとして世界的にあやかるファンがたくさんいる。

新鮮なローヤルゼリーの成分は全体の三分の二が水分、残りの三分の一がたんぱく質を筆頭に炭水化物、脂肪、ミネラルの順となる。また微量成分として各種のアミノ酸、リン酸結合体、ビタミン類、脂肪酸ほかを含み、人体にとっても生理的に有効とみられている。

しかし薬理効果についてまだ解明されていない部分が非常に多い。日本の各医大や病院での臨床報告がみられるが、その中からおもな効能をみると、神経系、消化系、呼吸系、肝臓、更年期障害、皮膚科、痔疾、がん手術後、老衰・性欲減退、不眠症、リウマチなど臨床例二一八例中有効一九三例となっている。

ローヤルゼリーの研究はようやく緒についたところで、日本の科学者によって発見されたパロチンやガンマ・アミノ酸をみても未知の物質が非常に多く含まれていると思われる。フランスではこの未知物質をR物質(ローヤルゼリーのRから)と呼んでいる。

ヨーロッパの研究報告でも、老人病に卓効・コレステロール値を下げる・異常血圧を正常値に・がん発生を防ぐ・女性機能を若返らせる・男性の性機能の延長‐‐などがみられる。

ローヤルゼリーの採取は蜜蜂の特殊な習性を利用し大量生産技術が開発され、高価な製品を比較的安価に供給できるようになってきた。日本の主産県は岐阜県で不足分は中国や台湾から輸入。商品形態はカプセル、錠剤、糖衣、舌下タイプなど。薬効が期待されるためファンも多く健食店での長期人気商品である。

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