百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ゲンノショウコ
どくだみとげんのしょうこは西洋医学万能、漢方薬の人気の中で、日本原産の誇るべき薬草である。平安時代から日本人の生活にとけ込んだ民間薬で、いずれも卓越した薬効を誇り庶民の生活を救い健康と長寿に役立ってきた。
(食品評論家・太木光一)
げんのしょうこはどくだみと並ぶ民間薬で、平安時代にはタチマチ(忽)草と呼ばれていた。別名をみるとテキメン草、イシャイラズ、セキリグサと薬効の高い名前がみられ、そのほかにはネコアシグサ、ミコシグサなど形状からくるものが多い。
げんのしょうこを漢字まじりで直すと「現の証拠」となり、現によく効く証拠の意味となる。江戸時代に入って下痢止めによく効くというので現在の呼び名に変わったのである。
日本全土のほか東アジアにもみられ、日当たりの良い山野、原野、丘陵、土手、路傍、河川敷などに自生する。花期には立ち上がって五〇センチメートルほどになり、最大で一mに達する。
品種はシロバナとアカバナに分かれるが、寒地はシロバナ、暖地はアカバナとなり、白色は関東・東北で、赤色は関西以西となるが、色によって薬効が変わることがない。
夏季に葉液から細い花柄が出て先端に小柄のある花二個をつける。成分の最も強くなる花の最盛期に、地上部(葡萄茎と葉と花)だけを刈り取り天日に干す。翌年のことを考えて根部を必ず残すこと。カラカラに乾いたら、げんのしょうこ茶の出来上がりで、一センチメートルぐらいに刻み密封して保存する。
また容易に入手できない場合は、健康食品チェーンからの入手も可能。価格も比較的安い。ハトムギ茎を混合して販売しているメーカーもある。
げんのしょうこ茶はタンニンを多量に含み絶対に副作用のないことで知られている。消炎、収れん、止瀉、止血、制菌作用がみられる。別の表現をすれば胃の炎症を抑え、ただれや潰瘍に対しても有効である。食あたりによる激しい下痢にもよく効く。
整腸薬としても上薬(副作用のない最高の薬)で健胃・強壮効果も期待され、お茶のように毎日一〇g程度を煎じて飲むとよい。下痢や食中毒には一〇~二〇gを四〇〇ccの水で半量になるまで煎じ、これを一日三回に分けてのむ。
また高血圧の予防にはげんのしょうこ一〇g、どくだみ一〇g、決明子(えびすぐさ)五gを煎じて常用すると効果的である。
げんのしょうこは下痢止めの妙薬であるが、逆に便秘にも効果的なことが判明している。便秘すると肌が荒れるが、肌を滑らかにする作用も大きい。この場合、高血圧予防と同じくどくだみと決明子の併用が望まれる。
濃く煎じた場合、扁桃炎用にうがい薬として用いられる。さらに風呂に入れた場合、薬湯としてあせもや湿疹などの治療用となる。
小さな切り傷や虫さされには生葉をかんで貼りつけておくと、痛みも薄らぎ、また止血作用もみられる。覚えておくとハイキングなどのアウトドアライフで便利である。
げんのしょうこは祖先から伝えられた薬効のあらたかな自然の生薬である。見慣れていないため名前は知っているが、生えていても気がつかない場合が多い。手軽な家庭の常備薬として愛用をおすすめする。