アポなし!新業態チェック(98)「ツマミグイ」中目黒店
●スシローの回転しない新業態 狙いは都心部独身女性
今年1月、回転寿司チェーン大手のあきんどスシローが、回転レーンのない新業態「ツマミグイ」をオープンさせた。「スマート・スシ・ダイニング」というコンセプトで、回転寿司の主要客層から外れる独身女性などを中心に、都心部での利用を狙ったまったく新しいタイプの店舗だ。
1号店が出店したのは東京・目黒区の山手通り沿い。東急東横線と地下鉄日比谷線が乗り入れる近くの駅名から通称は中目黒と呼ばれているエリア。45坪ほどの店舗は著名デザイナーを起用したスタイリッシュな内装で、流行のカフェスタイルを取り入れ、デザインだけではなく高さも異なるテーブルや椅子が配置されている。
メニューは大きく6つのカテゴリーに分かれている。寿司は江戸前とロール寿司。江戸前はやや小さめのシャリで1貫ごとに提供し、ひと口サイズのロール寿司は2貫で1品。メーンディッシュにあたる「お魚とお肉のアラカルト」は、スープ、茶わん蒸し、天ぷらなどのほか、「白子おろしポン酢」(580円)、「細かいパン粉で揚げた海鮮」(880円)、「国産黒毛和牛ローストビーフと揚げアボカド」「(1050円)といったバラエティーに富んだ料理が並ぶ。ほかにも、店内のカウンターから自分で選ぶビュッフェ方式の「前菜ツマミグイ」(各300円)や、4種類のドレッシングが選べる「こだわり農園のサラダ」といったフードメニューがあり、「ドリンク&スイーツセレクション」ではワインの品揃えも豊富。
同社では、既存業態が成立しにくい都市部を中心に、この業態を多店舗化する計画であるという。
★けんじの評価
店を訪れたのは平日のランチタイム。ランチメニューのメーンは「にぎりずし」「ロールすし」「にぎりとロール」「漬けマグロの海鮮(どんぶり)」という4種類のプレートである。いずれも980円で、スープカップに入った味噌汁とランチ用のサラダが付く。ランチメニューとして決して安い方ではないが、このメニューを実際に注文してみて少しばかり驚いた。サラダの野菜はどれもシャキシャキと新鮮で、葉野菜にはベビーリーフが使用され、ドレッシングやトッピングも上品だ。カップの味噌汁も具だくさんで殻付きのアサリがいくつも入っている。この2点のセットだけでランチメニューの魅力が大幅にアップしているのだ。ネット上でもランチのコストパフォーマンスの良さを評価するコメントが目立つ。
ランチメニューに対する考え方はさまざまだろうが、女性客狙いならサラダの充実は欠かせないだろう。少量の刻んだキャベツに申し訳程度の彩り野菜が添えられたサラダを、ランチのおまけに出している飲食店は多いが、あれはもったいないからみな黙って食べているのであって、決してランチの満足度向上には役立っていない。むしろ店舗の評価としてはマイナス要因ですらあるかも知れない。その点、このサラダのクオリティーは秀逸だ。
気になるのは、なぜこのように複雑なオペレーションが必要なシステムにしたのかという点だ。せっかくセルフオーダリング端末を導入しながら、回転寿司が本来持っている効率的な仕組みを中途半端に崩してしまっているように思える。この業態の今後の展開に注目したい。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。
●店舗情報
「ツマミグイ」中目黒店 開業=2015年1月29日/所在地=東京都目黒区青葉台1-30-10