業務用加工食品ヒット賞受賞製品列伝(5)唐揚げ&フライ編
外食メニューの活性化に貢献した業務用加工食品を表彰する「業務用加工食品ヒット賞」は今年第20回を迎える。あらためてカテゴリー別に受賞製品を振り返り、ロングセラー商品の強みを探る。
第5回で紹介するのは「唐揚げ&フライ」。これまで4社7製品が受賞している。「鶏唐揚げ」「白身魚フライ」「エビフライ」は外食・中食・給食とすべての業態で定番の人気メニューで、今回紹介する受賞製品はいずれも高い人気を維持しているロングセラーだ。
◆日本水産「笹形白身魚フライ」
受賞回:第1回給食部門(1997年)
ニーズに合わせた製造拠点 FF、CVSと新市場創造 「笹形」から「成型」と市場変化
●販売の現状
日本水産の「白身魚フライ」は「笹形」が業務用加工食品ヒット賞を受賞した1997年から大きく製品形態や販売先が変化している。当時は手切りの「笹形」が四角くカットした「角切り」に対して自然な感じがあるとして、給食・弁当市場が主なマーケットだった。その後、原料調達の変化や製造技術の進化、新たな市場の開拓などにより、「成型」タイプが成長。ファストフードのサイドメニュー、コンビニのレジ回りのワンハンドで食べられるメニューの拡大とともに新たな市場の創造に成功し、一時は大きく落ち込んだ「白身魚フライ」はV字回復して、15年には史上最高の販売額を達成している。
●ヒットの歴史
「笹形白身魚フライ」は、白身魚を手切りした「笹形」の形状の手づくり感・高級感が支持され給食・弁当の定番メニューの一品として人気だった。しかし、競合各社が中国生産品にシフトする中で、コスト競争力が優先し、差別化が難しくなってしまった。
だが、ニッスイではグループ企業によるホキ・スケソウダラなどの「白身魚フライ」に適した魚種の調達力や、骨がなく臭みもない食べやすさ、サクッとした衣と軽い食感のヘルシー感からユーザーの根強い支持を獲得し、現代の食シーンにマッチした新市場を創造した。
現在、同社では国内の他、タイ、中国、インドネシア、ベトナムと製造拠点を広げており、学校給食向けには国内品、ファストフード向けにはタイ、弁当向けには中国、チャイナフリーが求められる業態にはベトナム、インドネシアなどというように販売先のニーズに合わせて対応できる体制を整えている。
●裏ワザ事例
いつもの「白身魚フライ」にポテトフライを添えるだけでイギリスの伝統的な料理「フィッシュ&チップス」に早変わり。
2012年開催のロンドン五輪から居酒屋、バルなどの外食業態や惣菜でも広まっている「フィッシュ&チップス」はメニュー名を工夫するだけで食シーンを広げた好事例だ。
◆ニチレイフーズ「本和風鶏唐揚(粉ふきタイプ)」
受賞回:第3回給食部門(1999年)
押しも押されぬ唐揚げの横綱 「鮮やかな揚げ色」「白い粉ふき」簡単に 「怪味ソース」で新たな魅力
●販売の現状
「鶏の唐揚げ」は、あらゆる業態、あらゆる食シーンでの人気メニューだ。
ニチレイフーズは「鶏もも唐揚フレッシュチキン」で第1回(1997年)、「本和風鶏唐揚(粉ふきタイプ)」で第3回(1999年)の業務用加工食品ヒット賞を受賞。「冷凍鶏唐揚げ」のトップシェアメーカーとして東西横綱を張る製品として安定した根強い人気を誇っている。その他にも三役、幕内といった幅広い陣容を揃え、成熟している業務用冷凍鶏唐揚げ市場の中でも堅調な売れ筋製品だ。
●ヒットの歴史
1994年に発売した「鶏もも唐揚フレッシュチキン」は、ニチレイフーズ(当時・ニチレイ)がタイに生産拠点を設けた第1号製品。チルド原料を用いたフレッシュ感、手作業の衣付けによる手づくり感のある「冷凍鶏唐揚げ」として市場に受け入れられヒットした。
そして99年、竜田揚げタイプの「本和風鶏唐揚(粉ふきタイプ)」を発売。丸大豆醤油にショウガを効かせた調味たれの味付けと「鮮やかな赤味のある揚げ色」「白い粉ふき感」という調理人の技が、誰でも簡単に再現できる簡便性、そして見栄えとおいしさが評判を呼び、「鶏もも唐揚フレッシュチキン」と相乗効果で大ヒット製品となった。その人気は、家庭用にも波及し、家庭用冷凍食品「本和風若鶏竜田揚げ」が生まれている。
同社では日本、タイ、中国の3ヵ国11工場でチキン加工品を生産しており、「鶏もも唐揚フレッシュチキン」「本和風鶏唐揚(粉ふきタイプ)」はタイ産。タイではチキン大手グループGFPTとの合弁でGFPTニチレイを設立し、10年11月に稼働。鶏の飼育から加工までの一貫管理で安全・安心な品質と共に、得意先の要望に沿った幅広い製品の供給体制を整えている。
●裏ワザ事例
「本和風鶏唐揚(粉ふきタイプ)」は、メーン、弁当の一品、おつまみ、おやつとさまざまな食シーンに登場する。そのままの味付けで食べられるケースがほとんどだが、最近はやりつつあるのが中国四川省発祥の「怪味ソース」で食べるというもの。和風の味わいの鶏唐揚げと、「怪味ソース」の中華の味わいの絶妙なマッチングが、「面白い味」と好評だ。
◆テーブルマーク「有頭まるごとえびフライ」
受賞回:第8回給食・惣菜部門(2004年)
可食部大きく、ボリューム感たっぷり 有頭エビフライ市場の裾野拡大 ゴージャス感で差別化
●販売の現状
テーブルマーク(旧加ト吉)が2003年に発売した「有頭まるごとえびフライ」は有頭・尾付きで見栄えがよく、一般外食や惣菜、オードブルのメニューとしても堅調な人気を誇っている。サイズは特大(約20cm)、大(約18cm)とボリューム感満点の2種類が揃っている。
また「デリカ有頭えびフライ」も惣菜やオードブルの一品として「有頭まるごとえびフライ」以前からの製品ながら、発売以来根強い製品として支持されている。
●ヒットの歴史
エビフライはごちそうメニューの定番として外食をはじめ惣菜から給食に至るまで全業態に対応する人気メニューだ。しかし、冷凍食品企業各社ともリニューアルはあってもエビフライが新製品として大々的にアピールされることはほとんどない。それほど成熟したカテゴリーといえる。
その中で、テーブルマークの「有頭まるごとえびフライ」は、通常の無頭エビフライよりも見た目のインパクトが大きく、営業にとっても販売提案しがいのある、販売先も売りがいのある差別化製品として市場を広げていった。また、頭部の殻を取り除いてパン粉付けをしてあるため可食部が大きく、ボリューム感もたっぷりという、エビ好きにうれしい親切設計も人気の大きな要因だ。
それまでも有頭エビフライは高級レストランなどで使用されるケースはあった。だが、高級レストランだけでなく一般外食や惣菜、産業給食へと業態を広げたのがこの「有頭まるごとえびフライ」だ。
●裏ワザ事例
外食・中食の定番メニューのエビフライ。有頭・尾付きというおめでたい形状が人気で、ハレの日メニューとしての採用が多いのが特徴だ。
中には「卵とじエビフライ丼」として丼物として提供する例もある。丼からはみ出すほどのエビの存在感と有頭・尾付きのゴージャス感は差別化メニューの即戦力だ。