アポなし!新業態チェック(112)「スパゲッティ マリアーノ」日本橋茅場町店

2016.10.03 452号 12面

 ●サイゼリヤ、FF型のパスタ専門店、実験店舗で蓄積のノウハウを生かす、

 去る7月、サイゼリヤがファストフード型のスパゲティ専門店「スパゲッティ マリアーノ」を出店した。

 同店は、同社が2012年に出店した「マリアーノスパゲティ日本橋兜町店」に隣接したビルの1階にある。店頭はナチュラルな色合いの木目調デザインで、店内もハイスツールのカウンター風テーブルを中心にした比較的モダンな内装だ。

 パスタのメニューは14アイテムと種類も豊富で、レギュラーサイズと「グランデ」と呼ぶ大サイズの2種類がある。価格帯は、「ポモドーロ」「アーリオ・オーリオ」「マリアーノ・ナポリタン」「キノコのクリームソース」(各470円、グランデ各590円)など各パスタはレギュラーサイズどれも470円。サイドオーダーには、「バケット」(180円)、「水牛モッツアレラのカプレーゼ」「カチョ・エ・ぺぺ」(各290円)、「ムール貝のガーリックソテー」「熟成プロシュットの盛り合わせ」(各390円)や3種類のサラダ(180~290円)などがあり、構成はかなり幅広い。

 ドリンクメニューは、2杯目が無料となる「コーヒー&ティー」やジュース類(各180円)のほか、「生ビール」(340円)や「ハウスワイン」(120円~)などを取り揃え、午後3時までのランチタイムには、数種類のパスタにポテトサラダ、コーヒーか紅茶が付いたセットを、どれも500円という価格で提供している。同社がこれまでいくつもの店で蓄積した経験を生かし、満を持して発表された期待の新業態だ。

 ★けんじの評価 豊富なメニューとモダンな内装

 サイゼリヤは一貫して、ファストフード型の新業態にチャレンジし続けてきた。パスタ系の業態に限っても、05年に埼玉に出店した「スパQ&TacoQ」、東京・八王子の商業施設などに展開していた「サイゼリヤEXPRESS」、サンドイッチ業態を転換した秋葉原の「パスタス」、そして今回の店の前身となった隣地の「マリアーノスパゲティ」など、この10年ほどの間に多くの業態を出店し、実験を重ねている。

 今回の店舗は、テーマカラーを前面に打ち出したこれまでの同社の店舗デザインとは少し異なっており、メニューのアイテム数も従来よりかなり豊富だ。10年ごろに一度、ファストフード型業態の見直しを行うと伝えられた同社だが、そうした経緯を踏まえて発表された今回の店舗は、これまで同社のウイークポイントであったと感じられる要素が大きく改善され、素直に外食を楽しむことができる。

 ただ、唯一気になるのは、店内の食器類がすべて使い捨てのものであることかもしれない。店側のオペレーション効率からはやむを得ないのだろうが、環境問題を背景に持続可能な社会への関心が高まる中で、使い捨て食器の使用が顧客の心理的な満足度を低下させる要因になりはしないか。

 「マリアーノ」というのは、創業者である正垣泰彦会長がかつてイタリアを訪れて感銘を受け、同社の原点として位置づけている店舗の名称だ。その名を冠する同店には、同社のこれまでにない意気込みが感じられる。同店がオープンしたのは7月7日の七夕。同社はついに、運命の相手とめぐり会うことができたのだろうか。

 (外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

 ●店舗情報

 「スパゲッティ マリアーノ」日本橋茅場町店 開業=2016年7月7日/所在地=東京都中央区日本橋兜町16-5 Y’sビル1階

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