メニュートレンド:店でしか食べられない自家製缶詰 「マル・デ・クリスチアノ」
ここ数年、コンビニエンスストアでカキや牛肉といった高級食材を使った缶詰が棚に並ぶようになった。とはいえ、外食店が缶詰を自分で作ろうとは誰も思いつかないだろう。そうした固定概念を覆した店が東京・代々木八幡のポルトガル料理店「マル・デ・クリスチアノ」だ。
●調理法としての缶詰に着目 ポルトガルの食文化を表現
「ポルトガルでは缶詰って日常生活に溶け込んでいる食品なんですよ。友達の家に遊びに行って食事の時間になると必ず一つは登場してくるのですが、おいしい。そうしたあまり知られていないポルトガルの食文化も伝えられたらと思って自家製缶詰をメニューに入れたんです」とオーナーのキュウプロジェクト佐藤幸二社長は語る。
自家製缶詰はイベリコ豚のパテ、タコのラガレイロなど常時内容を変えながら7品をラインアップ。注文すると開栓していない缶詰が皿に盛られて(?)提供される。飲食店であることを考えるとシュールな印象だが、ふたを開ける時に感じるのは未知の食体験へのワクワク感だ。
缶詰は程よく温められており、ひと口食べるとスーパーなどで購入する缶詰商品とは明らかに異なる食感と香り、味に驚く。
「僕にとって缶詰は調理済みの料理を長期保存するための“製造方法”ではなくて缶詰だから生まれる味や食感を追求する“調理法”なんです。缶詰内で味が染み込み、熟成することで独特な味に仕上がります。それに身崩れのないまま骨まで食べられるのは缶詰ならでは。缶詰だからできる料理の価値表現があるんです」と佐藤社長は語る。
缶詰ゆえ長期保存が可能ではあるが、同店では1ヵ月前後で消費するペースの少量製造を心掛けているという。さらには自家製缶詰をメニュー化するため、店舗とは別に専用の加工場を設けて缶詰製造業の許認可も取得。万全の体制を整えた上で、定期的に品質検査を行なって食の安全を徹底していることも忘れてはならない。
言うまでもなく同店にとって缶詰は「メーン」の料理ではなく一品料理。その他にも魚介と生ハムとソーセージをパンに挟んでオーブン焼きしたボリューム満点な「フランセジーニャ」など多彩なポルトガル料理を70品超と豊富にラインアップ。フランス、イタリア、スペインとも異なる味わいで、コメや魚介を使った料理が多いといった日本食と共通する点も多い。そうした魅力を巧みに表現した料理で多くのファンを獲得している。
●店舗情報
「マル・デ・クリスチアノ」 経営=キュウプロジェクト/店舗所在地=東京都渋谷区富ヶ谷1-3-12 サンシティ富ヶ谷4階/開業=2014年9月/営業時間=18時~24時。月曜定休/平均単価=5000円/1日平均集客数=50人
●愛用資材・食材
「カザル ガルシア」 播磨屋(東京都八王子市)
ポルトガル料理と好相性
自家製缶詰を筆頭に多彩なポルトガル料理を提供する同店は、アルコールもポルトガル・ワインを豊富に用意。とりわけ微発砲感が特徴の同品はアルコール度数9.5度で飲みやすく、料理を引き立てるワインとして一番人気を誇っている。
規格=750ml(定温)