地域ルポ 上大岡(横浜)横浜南部商業集積地に26階の新ランドマーク

1995.02.20 70号 6面

京浜急行上大岡は横浜市の南部に位置する港南区にあって、鎌倉街道沿いに発展する賑わいのある街だ。京浜急行電鉄に加え、昭和47年に横浜市営の地下鉄一号線が開業したことにより、交通の利便性がさらに高まり、横浜市のベッドタウンとしての発展を遂げてきている。

一日の平均乗降者数は京浜急行が一三万五〇〇〇人、地下鉄が同八万人(平成5年度)。駅西口の鎌倉街道沿いにはバスターミナルも展開するが、この利用者数は一日平均六万人。単純計算すれば、地域への来街者はトータルで二七万人ということになり、横浜でも有数のショッピングゾーンを形成する。事実、駅西口の鎌倉街道沿いおよびその周辺には三越百貨店(サンプラザ)をはじめ量販店の長崎屋、ダイエー、イトーヨーカ堂、DSのダイクマなどの大規模小売店舗が展開する。

飲食施設については、ミスタードーナツやケンタッキーフライドチキン(KFC)、モスバーガー、森永ラブ、牛丼の吉野家などファストフード(FF)チェーンが目白押しで、独自の飲食ゾーンを形成している。しかし、街の中心軸となる駅は地域の再開発事業で雑然とした状況にあり、ビル建設の真っ際中だ。横浜市と京急の再開発事業が一体化する形で、「駅西口地区、駅前地区再開発事業」が進行中のもので、平成8年に百貨店をはじめ、専門店、文化・区民センター、インテリジェントオフィスなどから成る複合都市施設が完成する。これら施設の完成によって上大岡は、さらに商業、文化の新しい街として生まれ変わることになる。

上大岡は東京(品川)から京浜急行(特急)で約三五分、横浜からは一〇分の時間距離にあり、利便性の高い住宅・商業都市としての位置づけにある。

駅西口に出る。駅ビルを建設中であるので、すでに雑然とした雰囲気にあるが、表は鎌倉街道に面している。

道路に面してかつては多くの店が軒を連らねていたが、現在は一、二階の仮設店舗「ひまわりロード」になっている。

駅ビルが完成するまでの仮店舗ということだが、一、二階ともに物販、飲食など一七店、計三四店が営業しており、ビルが完成すれば、全店が入居することになっている。

飲食店舗は一階にカレー・そば・うどんの立食スタンド「リオ」、コーヒースタンド「プチフルール」、ケーキ・パン・アイスクリーム・チョコレート「一番館」など六店、二階にはとんかつ「さくらい」、お食事処・割烹「たぬき」、そば処「砂場」、やきとり「和楽」など一〇店舗の計一六店が出店している。

狭い歩道に面してコンパクトな店、また、いかにも仮設店舗という造作にあるので、来店者も少なく、活気に乏しいという印象を受ける。

駅ビルは上大岡の新しいランドマークとなる大規模複合施設で、横浜市と京浜急行電鉄の両者が施行する二つの再開発事業を合体させる形で進められている。総投資額約一五〇〇億円。

計画面積は横浜市が進める駅西口地区が四五〇〇坪、京浜急行再開発事業の駅前地区が三九〇〇坪の計八四〇〇坪で、京急の駅舎およびホームに沿って展開する。

百貨店は京急がキーテナントとして出店することになっており、地下一階から地上一〇階までを占める。一一階は駐車場(五〇〇台収容)専用フロアだ。

そして、地上一階、三階に京急の改札口、地下一階に地下鉄の改札口を設け、施設へのアプローチが容易になるよう、ターミナル機能の強味を大きく発揮する。

中央棟の地下一階から地上三階には専門店が入居することになっている。四階には最大四四〇席のコンサートホールやギャラリー、スタジオなどで構成する区民文化センターが、また、一階にはバスターミナル、地下二、三階には約三九〇台収容の駐車場が完備される。

地下三階、地上二六階の超高層のインテリジェントビルにはオフィスに加え、カルチャースクールやショールームが展開されるが、横浜市南部のランドマークとして、その利便性が大きく期待されている。

三越五階の洋食レストラン森永は、五三坪、九〇席の中型店舗で、昭和44年、三越の開業時からの出店で地域では老舗の分類に入る。

ドリア七五〇円、ハンバーグ六三〇円、オリジナルディッシュ九八〇円、和風膳・丼八八〇~九八〇円などが人気メニューで、トータルのメニューは約四〇アイテムと絞り込んである。

場所柄九割が女性という客層を考えれば、女性好みのするメニューは自ずと絞り込まれてくるわけだが、しかし、客にアキられないよう基本メニューにバリエーションをもたせるほか、季節ごとのメニュー、今年1月から企画することになった二ヵ月ごとの“イベントメニュー”の導入など、独自の工夫をおこなっている。

上大岡は横浜市の南部にあって、磯子区や南区、戸塚区、栄区などと接する。

街は東西に展開する丘陵地に挟まれる形で南北に伸びており、駅の東側が上大岡東、西側が上大岡西、大久保、港南といった行政地番で、ボリュームとしての商店街は駅西側の鎌倉街道沿いとそのウラ通り東口商店会、中央商店街、栄通りに拡がる。

地域の世帯数は八万一〇〇〇戸、人口二二万三〇〇〇人(平成6年12月末現在)で、横浜市で標準的なスケールの人口動態だ。

駅改札口を西側に出れば鎌倉街道で、道路に沿って駅ビルの仮設店舗が軒を並べる。鎌倉街道を挟んで向かい側には長崎屋、三越百貨店などの大型商業施設が展開する。

鎌倉街道に面した地域の中心的商業ゾーンで、人の往来が最も激しいところだ。長崎屋は地下一階、地上八階建ての商業施設で、最上階の八階にはそば処「ひふみ」、天ぷら・うなぎ「とき和」、ファミリーレストラン「不二家」などの飲食八店舗が出店する。

営業は朝10時から夜10時までだが、ショッピング施設内での営業であるので、平日の来店者は疎らで、とくに夜8、9時台の吸引力は大きく低下する。

長崎屋から五、六〇m南側に三越が位置しているが、人の通りもこのあたりまでという感じだ。三越は地下一階、地上七階建て。昭和44年のオープンというから、すでに四半世紀がたつ。

地域の老舗的存在の商業施設ということになるわけだが、施設は地下一階が食品、地上一階雑貨・ギフト、二階衣料・ファッション、三階おしゃれの専門店、四階ファミリーショップ、五階レストラン街、六階インテリア、七階教養と文化の広場というフロア構成で、地域の身近な大型小売店舗としての存在をアピールしている。

五階のレストラン街「味の散歩道」には、そば「いさご」、イタリアレストラン「ポポロ」、炉端焼「多幸」、串揚げ「日吉」、ラーメン「サッポロ8」、お好み焼「粉ぢゅう」、喫茶「オスカー」、洋食「レストラン森永」、中国菜館「桃李」など九店舗が出店しており、施設内では地域最大の飲食ゾーンを形成している。

三越の右前、鎌倉街道沿い三階建てビルの一階にKFCが出店している。店舗面積四〇坪、客席五一席。一七年前のオープン。イートイン三割五分、テークアウト六割五分前後の比率で、月商一三〇〇万円。

ファストフードは、このほかに長崎屋の北隣、中央商店街の入口左側角地のビルの一階に森永ラブが、また、近接地の鎌倉街道沿いに面してミスタードーナツ、吉野家などの出店も目に入る。

ハンバーガーチェーンの雄マクドナルドの姿は見当たらないが、これは再開発事業のためにクローズドしたということだ。しかし、平成8年の駅ビル完成時には新装出店することになっている(日本マクドナルド中央地区本部店舗開発部)。

客単価は900円

客単価は九〇〇円。客の入りは平日は2時ごろまでで一五〇人前後、土曜日は平日の二、三割増くらい。日・祭日は三〇〇人前後と平日の倍の客数になる。

「施設内の店舗ですからお客さんをストレートに来店させることが難しい。でも店としての吸引力はメニューの内容にかかってきます。あきさせないメニュー企画、味づくり、ボリューム感と、食べ残しはなぜ残されたのかと、多面的に考えていかないとお客さんに納得してもらえません。私は料理人としての経験が長いのですが、やはりメニューづくりが大きなポイントだと考えています」(門村光雄店長)

月商一〇〇〇万円。ペイラインはクリアしている。

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