メニュートレンド:アイデア満載の創作天ぷら
近年ブームになりつつあるのが、“天ぷらで一杯”が楽しめる「天ぷら酒場」だ。なじみ深い料理ながら、これまでは高級和食店か定食店でしか食べられなかった天ぷら。しかし揚げ物だけに酒との相性もバッチリ。大衆酒場化のポイントとなるのが、楽しさや酒との相性を高める「創作力」だ。そうした創作天ぷらを前面に打ち出して、新たなシーンを創出したのが東京・門前仲町の「天ぷら酒場 上ル商店」だ。
●仕込みと仕上げで価値を上(アゲ)ル!
43品を揃えた天ぷらのうち、「創作天ぷら」にカテゴライズされている商品は10品。しかし、よく見てみると野菜のカテゴリーには、ふろふき大根を天ぷらにしたものがあり、海鮮のカテゴリーには、カキの薫製を天ぷらにしたものがある。そして肉の天ぷらが6品も揃っている、といった具合に独自性の高い天ぷらが目白押しだ。
「天ぷらは衣を付けて揚げるだけですから素材の良しあしが味の決め手。しかし、高品質な食材は目玉が飛び出るほど高値なので、気軽な店では使えません。そこで食材にひと手間を加えて品質を補い、しかもSNS映えもする創作天ぷらの開発に力を入れることにしたのです」と、業態開発を担当した浅野源部長は語る。
今回取材した4品を例にすると、名物商品の「うにくらたま天」は、しっかりと味を付けた煮卵を天ぷらにして、上にウニとイクラをこぼれんばかりの山盛りに。下に敷いた海苔で巻くようにして手づかみで食べるスタイルが斬新だ。「ふろふき大根」は、だしを染み込ませて軟らかく炊いたふろふき大根を天ぷらに。厚さ3cmほどの輪切りにした大ぶりサイズが圧巻だ。「北海道産大沼牛レア天ぷら」は、塊肉を低温調理してから天ぷらに。高級レストランの絶妙な火加減が再現されたような美しいロゼ色が驚きを演出する。「すき焼きの天ぷら」は、すき焼きのタレで煮込んだ牛肉をキンチャクに詰めて天ぷらにしやすくした工夫が秀逸だ。
「創作天ぷらの難しいところは、仕上げ調理である油で揚げることを念頭に商品メイクを考えなければいけないところ。新技術のアニオンフライヤーとの出合いで、天ぷらにできる素材の幅が広がったことが大きいですね」と浅野部長。
撮影した商品のほか、洋食の定番「ビーフシチューの天ぷら」や、ラーメンの具を天ぷらにした「ネギチャーシューメンマ巻き天ぷら」など、ジャンルを超えたアイデア商品が並ぶ。「大衆酒場以外にも惣菜店やうどん店など、創作天ぷらを軸に幅広い業態で展開していきたい」と浅野部長。天ぷらというありふれた料理には、新しい可能性がまだまだ隠れていそうだ。
●店舗情報
「天ぷら酒場 上ル商店 門前仲町本店」 経営=TBI JAPAN/店舗所在地=東京都江東区門前仲町1-3-5/開業=2018年11月29日/坪数・席数=14坪・35席/営業時間=11時30分~14時30分、17時~23時30分(※土・日・祝は通し営業)。無休/平均客単価=昼950円、夜2800円
●愛用資材・食材
「七味唐からし」根元八幡屋礒五郎(長野県長野市)
卓上調味料にも妥協なし 創業280余年の老舗
卓上調味料にさりげなくハイブランド品を置くことで、クオリティーへのこだわりをアピールする。製造元は1736年創業と、280余年もの歴史を持つ老舗。唐辛子などの主原料を自社栽培し、辛さと香りの高さを追求。高級店で使用されることが多く「持って帰ってしまうお客さまが出てしまうほど」と浅野部長は苦笑いする。
規格=瓶12g、缶14gほか