穀粉・製菓原材料特集
◆穀粉・製菓原材料特集:もち粉需要が増加 人気のコンビニスイーツ
政府の後押しもあり米粉の輸出機運が高まる一方、国内では“もちっと”した食感のスイーツが人気となり、原料のもち粉、白玉粉の需要が増えている。大福や白玉が入ったアイスは海外でも人気で、「新規米粉より従来のもち粉や白玉粉の方が海外に出ている」(大手穀粉メーカー)といった声もある。(三井伶子)
●“もちっと”食感受ける
今年に入りコンビニエンスストアから、もち粉を使用したスイーツが相次いで発売された。ローソンの「モチクルン」は、もち粉使用の求肥(ぎゅうひ)でケーキをくるんだスイーツで、セブンイレブンの「生チョコクリーム大福」は、もち粉を大福生地に使用。いずれも、もち粉の特性を生かした、もちもちとした食感が特徴だ。タピオカブームも、タピオカでんぷんのもちもちした食感によるところが大きく、その流れを受けた形といえる。
米粉は、コメを加熱してから粉にするものと、そのまま粉にするものに分かれ、うるち米またはもち米から作られる。上新粉は、うるち米を洗い乾燥させてから粉にしたもので、もち粉は上新粉とほぼ同じ過程で製造されるが、原材料はもち米となる。白玉粉は、もち米を洗って水に浸したあと水を加えながらひき、沈殿したものを乾燥させて作る。白玉粉は白玉だんごや大福もちなどに、もち粉は求肥などに使われる。
19年1~12月の米穀粉生産量は、前年比3%減の9万1179tとなった。
上新粉は同5%減の4万3345t、もち粉は同2.7%減の9406t、白玉粉は同1.6%減の4742t、寒梅粉は同1.7%増の1560t、らくがん粉・みじん粉は同13.8%増の1120t、だんご粉は同11.5%減の1159t。
菓子種は同0.1%増の2508t、新規米粉は同0.6%減の2万7339tだった。
●作業性重視の米粉も
和洋菓子店の人手不足が進む中、穀粉・製菓原材料業界でも、現場の省力化につながる作業性を重視した製品の開発が進む。みたけ食品工業は、最終製品がより簡単に作れるプレミックス米粉を開発。日の本穀粉は、べたつきが少なく作業性に優れた米粉を発売した。これらの製品は現場作業の時短にもつながり、今後ニーズの増加が予想される。
小麦粉の置き換えが前提だった米粉は、今では食感、品質改良剤として食品全般に使用されている。ただ、小麦粉やほかのでんぷんと比べてコストが高く、主原料の一角を担うような量が使えない。
今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本の食文化である和菓子を世界にアピールする絶好の機会でもある。和菓子店は廃業が進み、米穀粉生産量は20年前の「だんご3兄弟」ブームを頂点に減少傾向にあるが、五輪を機に市場の盛り返しを図りたいところだ。
近年の気候変動は、穀粉業界にも影を落とす。気温の変化はコメの収穫量や物性にも影響を及ぼす可能性がある。メーカーは安定的に原料を仕入れるのが重要であり、異常気象は業界にとって懸念材料となっている。