包装もち、原料米の需給ひっ迫で値上げ必至
もち米の需給がひっ迫傾向となり、包装もち業界は危機感を募らせている。近年の農業政策などの変化でうるち米へ生産シフトしたのに加え、生産者の高齢化や主産地の自然災害なども影響し生産量・在庫量ともに減少。もち米は一物多価。価格・生産が一定の契約米のほかに、これまで安く入手できた加工用米の確保が難しくなり、相場変動する一般流通用米の価格もここ2~3年で急騰。厳しい原料事情に加えて、物流・人件費などの上昇が続き、包装もちメーカーも自社努力が限界点にきた。たいまつ食品やマルシン食品がすでに価格改定実施の意向を示している。もち米原料を取り巻く環境と包装もち業界の展望を探った。=関連記事2面(山本大介)
一般にコメといわれるうるち米の生産量と比較すると、もち米はその3.6%程度と極端に少ない。コメの農業政策と密接に関わっており、ちょっとした変化が数量や価格に大きく影響する。流通量が少ないとはいえ、もちのほかに、米菓や米穀粉、米飯商品やみりん商品などの原料用途があり、推定で年間30万t程度の需要がある。
生産地は2018年(平成30年産)の水稲もち玄米検査数量(農水省「農産物検査結果」)を見ると、北海道を筆頭に新潟、秋田、佐賀、熊本の順で、5道県で約65%を占めている。6位以下の岩手、千葉、山形、宮城、富山を加えると10道県で全体の約85%となる。
もち米は、16年まで全国的に大幅な供給過剰となり、検査実績ベースで16年度産は25万t、繰越在庫量は5万t(本紙調べ)あった。適正在庫量の3万tを大幅に超えたことにより、17年度産から生産量は大きく減少する流れとなった。
もち米生産量減少と同時期に、17年度産のうるち米価格は上昇。新規需要向けの加工・備蓄・餌・輸出用や転作推奨へ補助金が支払われ、農家はうるち米生産へシフトし、もち米の生産減少が加速した。さらに、佐賀や熊本など主要産地の自然災害も重なって、検査数量は17年度産22.2万t、18年度産18万t、19年度産15.8万t(19年12月末現在)と3年連続で減少。これら要因による生産減から毎年10月末在庫も減少し続け、19年度産では1万t前後まで在庫が低下していると推定され、適正在庫を大幅に下回っているものとみられる。
20年度産は今後の作付けで決まるが、一番懸念されているのがもち米種子の配布状況で、前年の96%程度との情報もある。19年度産並みに収穫できても不足する計算で、作況が105以上にならないと需要に対して供給が追いつかなくなる見通しだ。
加えて、反収(10アール当たりの収穫)の農家手取りは、うるち米に比べもち米の方が低い。ただでさえ高齢化が進んでいる上、新たにもち米を作る農家が減る悪循環が続く。5年、10年先の原料確保のためにも、農家にとって魅力ある価格を提示することも重要な取組みとなる。