食物販から学ぶメニュー開発のヒント:「海老とオクラのシンガポール風焼きビーフン」
●都市生活者のニッチなニーズをすくい上げる商品開発のセンスと技
成城石井は90年以上の歴史を持つ老舗企業だ。1927年の創業時には食料品店であったが、1976年に現在のようなスーパーマーケットを開業。芸能人などが多く住む東京・世田谷の成城という立地で、大衆向けの低価格スーパーとは異なった進化を続け、独自のポジションを確立した。
同社の転機は、1997年にJR駅ビルの「アトレ恵比寿」に出店した時期だといわれている。当時、都心の駅ビルに高級スーパーが出店した例はあまり多くなかったはずだ。山手線の駅ビルで業績を上げるまでには、いろいろな試行錯誤があったようだが、成功要因の一つは自社製造商品のクオリティーとセンスだろう。
成城石井には、デザートや惣菜などで数多くのヒット商品がある。しかし、この「海老とオクラのシンガポール風焼きビーフン」はかなり微妙なアイテムに思えるのだ。麺類だからおかずにはなりにくく、弁当というわけでもない。そもそもビーフン自体が万人受けする料理ではないだろう。しかし、エスニック料理が好きな人にとっては、かなり魅力的な商品だ。外食並みのクオリティーがあり、電子レンジで温めてもおいしいが、そのままでも食べられる。ややポーションは少なめだが、軽いランチにはぴったりだし、宅飲みのつまみでもイケる。税抜き500円以下という価格もうれしい。実際、同店のエスニック系商品にはヒットが多いのだ。食品スーパーとしてはニッチ商品かもしれないが、外食のニーズと確実に競合する強力なライバルだと感じる。
2017年に発売された当時は、オクラではなくスナップエンドウが添えられていた。翌年のリニューアルからオクラに変わったのだが、筆者は個人的にスナップエンドウの方が好きだったのだ。
(入江直之)
●「海老とオクラのシンガポール風焼きビーフン」499円(税抜き)
「成城石井」各店
所在地:関東、東海、関西を中心にした各地
編集協力:株式会社イートワークス
http://www.eatworks.com/