コロナ禍で非常食拡大 日常食との垣根なくなる

 災害用非常食市場が新型コロナウイルス感染拡大を機に大きく拡大している。アルファ化米最大手・尾西食品は1~5月、販売実績が前年比約2.5倍となり、「感染症がここまでインパクトを与えるとは」(小林昭彦専務)と驚きの声。続くアルファー食品も同2倍も伸長。従来の自然災害では、行政や企業備蓄用商品が動くのに対し、今回はネット販売や生協の共同購入を通じた個人需要が旺盛で、自助意識の高まりが判明。同時にパックご飯や包装もち、野菜系飲料など、保存性に優れる加工食品の動きも良く、非常・日常食の垣根がなくなってきた。=関連記事8面(佐藤路登世)

 これを裏付けるのが、奥田和子甲南女子大学名誉教授が日本災害食学会の認証食品製造企業を中心(23社)に6月18~19日に実施のアンケート調査結果で、全65アイテム中売上げが拡大した商品は85%に上る。8月29日にオンライン開催される同学会で発表する。

 特に伸びが高いのが野菜系惣菜で、A社の「根菜のやわらか煮」が同3121%増、「里芋の鶏そぼろ煮」同1868%増。免疫力向上に野菜だが、コロナ太りを解消する食物繊維が豊富な根菜類や芋類への関心が伺える。加工食品も健闘し、K社「野菜たっぷりスープセット」が同300%増、野菜飲料「野菜1日これ一本」が同136%増となった。

 主食系では、アルファ化米商品は総じて同2~3倍の伸び。ほかパックご飯や包装もち、かゆ類など一般加工食品も健闘し、「予想外の動き。他の災害なら備蓄完了したら止まるのに対し、長いスパンで消費が続く」(E社)とする。

 そこで非常食専業メーカーから「従来われわれの業界は、賞味期限の延伸に取り組んできたが、これだけ災害が頻発すると、それ以上に味や品揃え、より多くの人が安心して食べられる商品が求められる」と、方針転換が急務だ。現に尾西食品やアルファー食品の新商品では、在日イスラムに対応したハラール認証やアレルギー対応商品、おこげ、めん類、菓子類など多様な商品が誕生している。

 今後は、大雨や洪水が頻発するとともに台風シーズンを間近に控え、複合災害化が不可避だ。そこで、コロナ感染を恐れ避難所への抵抗感が強まる中、自宅に備える意識はさらに強くなり、旺盛な個人需要が当分続くことは間違いない。

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