お店招待席 「パイ&ティー・シスレー」東京・渋谷
「ハンバーガーに飽きた人に、トワイニング・ティーとパイをファストフードスタイルで提供しよう」(日下正店長)と、昭和63年12月、若者の街、原宿表参道にオープンした。場所柄、一〇代から二〇代の女性が多く集まる所。ターゲットを一八歳~二〇代前半に置き、FF的でありながら、落着いた雰囲気を持った店である。
オープンエア席も
一階は、売上げの半分を占めるテークアウトと窓側に少しばかりのカウンター席、そして客の好みで店外のオープンエア席も楽しめる。
二階がイートインのメーン席。歩道側に大きく張られたガラス越しに、道行く人、季節により色あいを変える街路樹が目に入り、さながらオープンエア席といったところ。
「すぐに食べられ、ひと味違ったもの」としてパイが導入されたが、パイは、もともとイギリス料理ということで、メニュー開発はイギリス人。店名はフランスの点描画家として知られるシスレーからとり、味付けはできるだけ日本人の味覚に合わせたというから、まさに国際的なパイだ。
「外側が硬く、中身はドロリとしたシチューを入れたパイのため、皮には一工夫がしてある」という。外側を折りパイ生地でサクサク感を出し、内側に練りパイ生地を使い、シチューの水分をしっかり閉じ込めている。
メニューは、オープン当初一二種あったが、以後ABC分析により売れ筋を残し、不人気なものを外して新メニューを入れることで一〇アイテムにした。
定番メニューであり人気メニューは、「クリームチキン」(三八〇円)。これで全体の二割。次が「アップル&プルーン」(三八〇円)、「ビーフチリ」(三九五円)と続く。
カレーはエスニックになじめないころのため、受入れなかったという。このほか、ベジタブルはイメージがはっきりせず訴求力も弱かったとしており、「具体的にホウレンソウなどと明記すると選び易いし、女性の場合、リアルなものが受け入れ易い」と見る。
単品でもおいしく
新メニューとして、「ハム&マッシュルーム」「ビーフストロガノフ」「てりやきチキン」がある。外人客が多いためより具体性あるネーミングも求められる。
「味付けは甘辛いを基本とし、ドリンクとのバランスを抜きにして単品でおいしく食べてもらう」味のこだわりから、食材原価率はかなり高め。
ドリンクの需要が半分を占めることでカバーし、メニュー幅も紅茶だけでなく、コーヒー、ココア、炭酸類と広げ力を入れる。
最近では、メーンのパイのほか、新製品の「スープインブレッドボウル」を発売し話題を投げかけている。
アメリカで見かけたものをヒントにしてのメニュー化だが、仕かけは簡単で、パンの一種であるブールをくり抜き、中にスープを入れたもの。
発売当初はテスト販売としてコーンポタージュスープ、クリームトマトスープを出していたが、今は人気ある「チキンコーンチャウダースープ」(七八〇円)、「クリームマッシュルームスープ」(七〇〇円)、「クラムチャウダースープ」(七五〇円)、「パンプキンスープ」(六七〇円)など全九アイテムを揃える。ドリンク通常三八〇円が一五〇円のサービスという特典をつけ、一日二〇〇個を売る。
すみ分けが課題に
オープン時のコンセプトであった「落着いた雰囲気」から、「子供から大人まで、もっと気楽に歩いても食べられる雰囲気」にしたいと、店長さんは個人的願望を語る。
テークアウトが大きな売上源となるだけに、イートイン、テークアウトの上手なすみ分けが今後の課題となりそうだ。
パイはおなじみだが、スープインブレッドボウルは“何だろう”とジッと見入る若者たち。2階客席は総ガラス張りで開放的だ
〈パイ&ティー・シスレー〉
〈創業〉昭和63年12月
〈所在地〉東京都渋谷区神宮前六‐三‐七、Tel03・3400・2878
〈営業時間〉平日午前9時~午後10時(日曜9時)、無中無休、正月はオールナイト
〈店舗面積・席数〉四五坪、七二席
〈従業員数〉正社員二人、バイト三〇人
〈客単価〉七三〇円~八〇〇円
〈一日来店客数〉平均六〇〇人
〈平均月商〉一四〇〇万~一五〇〇万円
〈客層〉一八歳~二〇代前半の女性
〈人気メニュー〉パイではクリームチキン、スープブレッドではチキンコーンチャウダー