総点検-激震下の外食・飲食業 専門性生かしコックレス市場に進出 「セレス」

1995.09.18 85号 4面

理由はさまざまだが、コックレス化が叫ばれて久しい。イコール厨房無用論にもなる。何も、コック・厨房が無用というのではないが、最低でいいという考え方だ。この時流をビジネスチャンスと捉えて「厨房こそ金を生む」とレストランに最新の厨房を設置、待ちのレストラン経営に外販を併用させて売上げをアップ、将来的には高級レストランの多店舗展開を考えているのは銀座ベルフランスの料理長を務めた石神和人氏の「セレス」である。同じく、集中調理・マニュアル調理というのはセントラルキッチン(CK)を持つ大手飲食企業の独壇場であったが、「あなたのお店のCK」をテーマに中小の個店対応レシピオーダーを手がけているのは喫茶店経営で辛酸をなめ尽くした「樹下夢」の大塚陽男氏である。いずれも地道に現場を経験したからこその発想であり、レストランの厨房機能を最も合理的に考えた結果の経営戦略である。厨房のあり方からレストランの新たな生き方が模索されている。

レストラン「セレス」(神奈川県横浜市、045・591・9779)のオーナーシェフ石神氏は独立にあたって長年の経験から「調理場が一番お金を生む」という信念を貫徹。自ら設計に携わり、厨房機器メーカーや施行業者とディスカッションを重ね、これと思う厨房には何度となく足を運んで作り上げた。結果、クックチル、真空調理機能も備えたオール電化厨房となり、厨房二〇坪に三〇〇〇万円を投じて完成した。客席は五〇坪。通常は総スペースの四分の一が厨房スペースといわれているので、全体の比率でみるとかなり広いが「実際にはそんな広くないですよ。まだ改善点は多い」という。

何故、それほどに厨房にこだわるのか。「レストラン経営を合理的に行うことを考えたら、まず、厨房をいかに合理化するかを考えなくてはいけない。また、本当に質の良い人材は自分で育てなくてはいけない。労働環境を良くしないと人材は定着しない。それでなくても労働時間が長く3K職場なのだから‐‐」。

また、日本の厨房に対する認識の低さはオーナーが門外漢のどこぞの社長というケースが多いからで、厨房の職場改善はコックの夢たわごとと映るらしい。「動線が変わるだけで人件費が削減できるのに……」である。

石神氏は独立を「横浜の副都心港北ニュータウンは新進山の手と言われてリッチな人が移り住んでいる。三〇万都市になるところであり、人生の後半をかけたい」と九四年3月にレストランをオープンした。店舗はイタリアンを意識した開放的な店内作りの「カフェ・レストラン」。客単価は昼二〇〇〇円、夜四五〇〇円。子供も老人も気軽に家族で寄れる高級ファミリーレストランというコンセプトである。「一日二~三万円の社用族相手の商売は一六年間で十分。多くのファミリーに来て欲しい。この厨房をCKとして多店舗展開も考えている」。

現在は通常のレストラン営業のほか、レストランの厨房と石神氏の腕を最大限に生かしてスープやソースベース中心の外販と真空調理で結婚式のケータリングを請け負っている。多い時には二〇〇万円と全売上げの半分を占めるときもある。「コックレス時代に工場の大量生産商品を使うよりグレードの高いものを使った方が差別化になる」ことから料理のコンサルタント依頼もある。

半面、初めてのことだけに業態としてこのままでいいのかという試行錯誤もある。独立して一年半たつが、九七年に訪れる神奈川国体を開化の時と想定している。「今は苦しみの時」と言うものの「スタッフも素材も一流店の陣容」を武器に新たなレストランの在り方を模索している。

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