発芽玄米、20年ぶり拡大 腸内環境改善に強い関心
コロナ禍の健康志向で発芽玄米市場が20年ぶりに拡大している。最大手ファンケルの「発芽米」の店頭POS(KSP)実績が、昨年3月の外出自粛要請や4月の緊急事態宣言を機に急伸し、両月は前年比20%以上伸長。以後一貫して前年増をキープし、感染第2波の7~8月は同2桁増、第3波の今月第1週も同15%増と好調だ。2番手の大潟村あきたこまち生産者協会の売上げも昨年2月以降、2割以上の伸長で推移している。(佐藤路登世)
伸びている要因は「免疫力」や「健康・美容」のキーワードで、食物繊維を豊富に含む玄米そのものに注目が集まっていることがあり、この2ワードに共通する「腸内環境改善」に対する強い関心の表れだ。そこで、玄米を発芽させ栄養機能性や味などを高めた発芽玄米に注目する人が増加している。
そもそも発芽玄米の誕生は2000年にさかのぼる。当初4年間は、TVの健康番組などで盛んに取り上げられ、ブームとも呼べる状況だった。現にピーク時の02年、「ファンケル発芽米」は68億円を売り上げた。だがその後は減少を続け、19年は約20億円と右肩下がりの縮小を余儀なくされている。
ただ発売当時、ファンケルは大規模なTVCMを投下する一方、パブリシティを味方にメディアキャラバンを実施し、2年間で750を超える媒体にアプローチするなど、新市場の創造に大規模な予算と労力を投入した経緯がある。
だが今回は試食に代表される販促活動はもとより、特売もない中での市場拡大だ。そこで大潟村あきたこまち生産者協会の涌井徹社長は「玄米の価値が向上している表れ。仕掛けたブームには終わりが来るが、今回は一過性ではない」と予想する。
この動きを高機能玄米協会の日浦拓哉事務局長は「毎日の食事の大切さが再認識されている」と分析する。ただコメ消費全体では、業務用の大幅減を家庭用でカバーできず、コロナ禍は明らかに逆風だ。その一方で、パックご飯や家庭用冷凍米飯は伸長し、「息の長い消費とするためには、簡便ニーズへの対応が不可欠」(日浦事務局長)であることは間違いない。