「鎌倉シネマワールド」テーマに合わせ店、メニュー作り
映画と映像のテーマパーク「鎌倉シネマワールド」は、松竹(株)(東京都中央区、03・5550・1390)が創業一〇〇周年事業の一環として鎌倉の大船撮影所内に創業したもので、10月10日にオープンした。三階建の屋内施設で、一階が日本映画ゾーン、二階がアメリカンシネマゾーン、三階がフューチャーゾーンとして展開する。最新の映像アトラクションや撮影現場を体感できることがセールスポイントだ。
一八の飲食店はテナント出店によるもので、それぞれが各ゾーンに合わせた店づくりやメニュー開発を行っている。各店の合言葉は、「アミューズメント施設におけるいままでの飲食サービスのイメージを塗り替えること」だ。展開に際し各店とも他のアミューズメント施設の飲食サービスを視察したが、「手抜きのメニューと劣悪なサービスばかりが目についた」という。「せっかくの楽しいひと時を飲食で台なしにしては申し訳ない。楽しさを一層盛り上げるためには、飲食施設が演出をリードしなければ」という意見で一致したという。
不特定多数を相手にするアミューズメント施設は、通常はカレー、ラーメン、うどんなど、奇をてらわないオーソドックスなメニューを主力とする。だが、鎌倉シネマワールド内にはすし、とんかつ、そばなどの専門店や、テクスメクスフードやピザ&カフェの新業態が軒を連ねる。飲食はもはやオマケではない、といった様相を呈している。
いままでのアミューズメント施設の飲食といえば、「高い」「遅い」「まずい」とイメージされるのが定番。特定店舗による施設内飲食の寡占、一見客の圧倒数、忙しさのあまりによる調理の効率化がサービス向上の足かせとなっていた。また、それを暗黙の了解としてユーザーが受け入れて来たのも事実である。そうした既存イメージを払拭することが、鎌倉シネマワールド飲食施設に課せられた最大のテーマといえるだろう。
アミューズメント施設における新たな飲食スタイルを模索する試みが、どこまで突き進むか見物だ。オープンに沸く各店を紹介する。
アメリカンシネマゾーンで展開する洋食主体の「ハリウッドカフェ」は、一六二席を有する施設内最大のレストランだ。カフェテラス方式のオープンキッチンではシェフが自ら盛り付けを行うなど、施設内レストランでは珍しい客と店員のコミュニケーションに注力している。
「アミューズメント施設のレストランは、来客時を除くと接客サービスが皆無であるケースが多い。再度来店を願うようなサービス精神が、アミューズメント施設内のレストラン経営には必要」(佐藤修料理長)という。赤坂ヒルトンホテルのフレンチ出身の佐藤料理長をはじめ、ホテルオークラ出身の支配人、東京ベイヒルトンホテル出身のマネジャーが、「過去のノウハウを生かして必ず満足させる」と言ってはばからない。
例えば、料理については、アメリカンシネマゾーンのテーマに合わせ、ボリューム感と高さを強調するアメリカナイズな盛り付けを施している。接客サービスについては、客が席を立ち店から出るまで必ず見送りをする、といった具合だ。作り置きを強いられるメニューに対しても、「回転率の高さに甘んずることなく、一定の時間を経過したメニューはすべて廃棄する」と言う。効率よりも品質を優先する構えだ。
同店の二階では、フルサービスのコース料理を提供する「ハリウッドレストラン」を複合して展開する。こちらは落ち着いた雰囲気の完全なイタリアンレストラン。コースメニューは二五〇〇~四五〇〇円。食材がすべてフレッシュであることが売り物だ。
本物志向を追求する姿勢やユーザーニーズをすみ分けた複合戦略は、今後のアミューズメント施設内における飲食店経営のあり方を占う試金石となりそうだ。
◆ハリウッドカフェ=一六二席、一日一〇回転見込み、客単価八〇〇円
◆ハリウッドレストラン=七二席、一日三~五回転、客単価三五〇〇円
(株)大庄の新業態である「ロデオスター」は、アメリカで大人気上昇中のテクスメクスフードを紹介している。テクスメクスフードは、メキシコ料理を基本にカリフォルニアクッキングのアレンジを施したもの。油控えめ、野菜豊富、肉の基調はフィレ、といったヘルシー感覚のダイナミックメニューがセールスポイント。発祥のアメリカ西海岸ではステーキ、ハンバーガーなど従来のアメリカンフードに代わる勢いで人気を集めているという。
お勧めメニューは「ジューシーステーキ・三〇〇g」(一九八〇円)、「ビーフファヒータス」(九八〇円)、「チム・チャンガ」(八五〇円)など。
店内はウエスタンバー調、サンタフェ調、カントリーリビング調、オープンテラスの四つのコーナーで構成され、好みに合わせて席を選ぶことができる。同店は「庄や」を展開する(株)大庄の新業態としても注目されているが、「軌道に乗れば多店舗化もありうる」(平了寿スーパーバイザー)としている。
◆ロデオスター=一四〇席、客単価八〇〇円(昼)、二四〇〇円(夜)
アミューズメント施設の飲食サービスと言えば、「高い」「遅い」「まずい」という見方が相場だ。だが、そんなイメージを刷新するテーマパークが現れた。このほどオープンした「鎌倉シネマワールド」である。施設内にある一八の飲食店は、それぞれがテーマに沿う演出を施しており、アミューズメント施設における飲食サービスの新たな展開スタイルを見せている。